もうどれくらい死んで生まれたかなんてことはもはやどうでもよかった
つめの表面がするするしていて私はそれをむさぼるようにさわっていた

たぶん朝、昇りきった陽の光の中で目を覚ませば
つめの間にぎ ....
手のなかの電池の切れた携帯電話だけが熱かった
毎日一度も鳴ることはなく
しかし今日も握りしめて生きている
何もかもが煌々と夜を照らしても
手のなかの電池の切れた携帯電話だけが熱かった  ....
側頭部のねじが回っている
にちにちにちにちにち…
脳が絞られるように さみしくなる。
あしたもこうだろうか


なんにもない日だ
さっきから携帯電話が光っている気がするけれど
ほんとは ....
がさがさの唇が切れてしまった
まるで怪我をした芋虫のようだ



くだらないと言えばいうほどくだらない
ので、とりあえず電源を落とす




三行に分けて書
こうと決め
たの ....
あたまの傷のことや
からだの傷のこと
目のなかのぐるぐるの暗がりのこと
そういうことを口に出すのは
醜くていけない

たたかうこと
負けを肯定すること
生き抜くこと
まぶしい、
と ....
爪を短く切るようになりました
あなたのせいです
そのまあるい目があたしの右腕をちくちく刺すから
掻き毟る癖がついたのです
あなたのせいです
切っても切っても
まだ足りないように思えます
 ....
いらないと思ってたけどいらなくなかった
忘れられることが何より怖いくせに
忘れればかなしいことはひとつ 消える
わかっている


雪がとけるのは誰のせいなんだろう


明日の死と永遠 ....
{引用=
いつも考える私は黒い上下の服で
見つめる白い棺の中身に顔がない



たわむれに
両手でそっと抱いた母の
細さに泣きたくて
三歩
あゆめ  ず

たわむれの
 ....
冷たく横たわったそいつは
人間にもけものにも昆虫にもなれない
5ほん足のいきもののなれのはてだった
みみずにもからすにもこうもりにも馬鹿にされた
5ほん足のいきもの

「せめてここに居るこ ....
死んでしまおうかと思っている
来ないと思っていた明日が来たから
死んでしまおうかと思っている
来る筈のない今日が来たから



ドアがあればあなたが入ってくる
壁があればあなたが生えて ....
たんすの中におまえがはいっている
たんすの中におまえがいつもはいっている



何を尋ねることもかなわずに
わたしこのままひとりぼっちなのだろうか
せっかくたんすの中におまえがはいってい ....
硝子張りの角の席で
ふたつ前の席の男の人の
袖にとまった蝿だけを見詰めている私は
硝子の向こうへ降り続く雨に
「  」、
溶けていきそうです

東京の薄暗い雑踏は
不意に割れ目から流れ ....
わたしの名前は声に出すと
窓の外からきこえるクラクションにそっくりで
誰かが警笛を鳴らす度

「はぁい」

私は返事をする





先生どうしてママはごはんはいらないというと ....
あなたが私を食べ散らかして
先生に怒られた
骨や皮や肉片までそこらに散乱、
そして何より血液が汚らしく零れていて
私が望んだことなのだから、別にあなたは悪くないのに、
先生はお行儀が悪いと言 ....
お医者に、
おめでたです と言われ
はあ。と答える私。
父親は誰だろう。パパかな。
そうのんびりと考えを巡らしていると、はい、とお医者から胎児を手渡された。
胎児には臍の緒と胎盤がついてい ....
今朝方まで降り続いた雨で
赤い実、おちた
何とはなしにいつものパターン
硬い靴底で踏み潰す
だけどそれは、赤い実じゃなくてふにゃふにゃのみみずだ
ずるりと這う怠惰は音も立てず×××
固体な ....
「人は」とか
「人間は」なんて
平気で口にするあなたはいなくなってしまえ


みんな同じことや違うことを言ったり書いたり歌ったりして
その度に軽くなっていく言葉は
私を見限る
私が見限 ....
{引用=
ずっとずっとずっとずっと
お天気なんて悪くていい

あたしの頭ん中みたく
ずっとずっと悪くていい

ずっとおそらが曇りなら
俯いて歩かなくたっていいし

ずっと雨がやまな ....
お前の這う地べたを
はるか高みから見詰めている


雑踏、
誰も私なんか見ていない



お前の這う地べたを
はるか高みから見詰めている


蟻よ、
お前は私を見てはくれな ....
一、

まっくら  まっくらがりが  まず
鎮座、回転、連続回転
わからない
わからないよ
どうしたって、
まっくら
まっくら



二、

放射している
いがいがのとげ ....
夏がわたしを冒していく




(おかあさんのつくったごはんには)
(毒がはいっている)
(でもわたしはおかあさんがすきなので)
(死ぬとわかってたべている)


そう思い続けて ....
笑うな
あたしをわらうな
口を開けて{ルビ哄笑=わら}うな
目を開いて嗤うな
鼻の穴を開いて{ルビ嘲笑=わら}うな




あたしがわらいたい
お前をわらいたい




 ....
それは予備校の帰り道、階段の手前で不図わたしの足がとまったので
オヤどうしたのだろうと 首を傾げ かけた その瞬間
わたしは己の感覚をいっぺんに失って、わたしの頭のてっぺんをみつめていたのでした。 ....
ここはそのむかしパパの書斎だった
むかしといっても2年ほど前までのことだ





その部屋
の真ん中
パパの回転椅子
の上のドーナツクッション
の上に
足をひらいてすわってし ....
突き刺してほぐしてしまってください、スプーンやフォークといったような安い金属でいいですから
つまりそれがものの価値、いいえそんなことは


誰かに任せるのが楽です
わたしもう帰ります

 ....
君は僕の手首の傷のこともちっぽけな心のこともぐちょぐちょの中身のことも知っているんだ。だから僕は君を信じられない。大丈夫だよと慰める声が嘲りに聞こえる。優しげに微笑む顔がどろりと崩れて醜い満面の笑顔に .... ほんとうの絶望に出遭うまで
あと何時間何分何秒
この曇天は
とりどりのあかりで
硫黄のけむりのいろをしているから
おさない夢のおわりにみた、あのあかい
みたことのない動脈血よりもっとあかい ....
この栓を抜いたら
この水は死ぬ
この栓を抜かなかったら
この水は死ぬ




私には関係がないことなので
チェーンにかけた人差し指をくっと曲げて
生まれる音をききながす


 ....
今私の頭の上には呆けたような空がある。
長い長い長い年月の間に己がなにものであったかをすっかり置いてきてしまったような様である。

誰もいない公園のベンチに横になる。少し躯をぎゅうと伸ばして ....
窓ガラス越しのあなたは
いつもよりずっと透明だった

鮮(…、)かな透過光、
あおときいろ混ぜても
私にはつくれない


べつに新しくもない上着を
着る
肌に浮き出す水分の珠は
 ....
因子(113)
タイトル カテゴリ Point 日付
するする自由詩109/1/29 13:54
磨く夜自由詩209/1/28 19:52
ねじの日自由詩009/1/28 19:51
今やってきたみっつ短歌009/1/16 15:06
ぱくぱく自由詩508/11/19 0:11
しぼる自由詩008/11/3 13:46
未だ降らない雪のとけることを思って空の向こうばかりを見る日々自由詩408/10/24 22:31
カヴァー自由詩9*08/10/20 0:47
5ほん足のいきもの自由詩3*08/10/2 23:38
「死んでしまおうかと思っている」自由詩2*08/9/17 21:54
たんすの中におまえがはいっている自由詩3*08/8/29 22:45
そと自由詩3*08/8/25 18:36
あなたと警笛自由詩308/7/28 2:56
お食事会自由詩3*08/7/16 22:29
踊れ胎児自由詩6*08/7/15 21:29
七夕自由詩2*08/7/7 23:53
むしけらと客体化自由詩2*08/7/5 0:20
くろぐろとした唾液はいらない短歌2*08/6/28 11:58
池袋がすきだ自由詩008/6/25 23:03
写生自由詩1*08/6/24 0:49
夏が自由詩4*08/6/15 17:58
「笑うな」自由詩2*08/6/4 23:16
普通のはなし自由詩2*08/6/2 0:15
ここはそのむかしパパの書斎だった[group]自由詩6*08/5/28 21:40
十二月だってことくらいわかる。まだわかるから藻掻け。自由詩1*08/5/6 23:23
最期のダンス散文(批評 ...2*08/4/28 3:44
曇天、硫黄自由詩1*08/4/25 23:54
ごぽっ自由詩6*08/4/21 14:32
此方の景色散文(批評 ...6*08/4/15 0:45
リアリティの婉曲自由詩1*08/4/13 23:11

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