焼き終ると
かたちはもうなくなっていた
まだわずかにのこっているだろう
最後の肉を焼こうと
熾火が立ち上がっていて
それはいのちの終りの
かがやきのようにも見えた

  (そして、骨だ ....
僕たちは
太陽をかついだ
高く とてつもなく
高いところまで
持ち上げて
その中に入りこんでは笑った
僕たちは
それがいまなのだと信じた
ひたすらに信じながら
じぶんじしんの
中心 ....
眠ることでなんとか赦されているように思えて、夜はそ
のために親しい。けれども、眠れない夜はいつもやって
きて、私を不安にさせる。たとえば石のような硬さと冷
たさのなかで、それでもふるえながら眠ろ ....
小さなものたちが
それぞれに
自らの場所で躓いている
その中に僕も君もいて
むすうの僕と君が
それぞれに
自らの小さく見える
けれどもほんとうはもっと大きい場所で
同じように躓いている ....
破線をだまして
進んでいく
なおもそれを記して
立ち止まりながら
何度も歩き直してきた歴史を反芻する
そうやって忘れてきたのだ
そうやって自らの
泥を隅に追いやっては
何もなかったよう ....
空が開かれていた間に
あつまっていた光が
散り散りになろうとすると
向こう側で何かがゆっくりと閉じ始める
地平線の近くで
やわらかく昏いものが
せいいっぱいに手を伸ばそうとしている
その ....
俺たちは列車を見送っていた
線路の脇の柵に囲まれた高台の上で
俺たちは黙って立ちつくし
通り過ぎる列車をただ見送っていた
柵を乗り越えて列車に飛びこもうと思えば
出来たはずだがそうはしなかっ ....
俺は始発駅の長いホームに立って、列車を待
っていた。それがその日の最終で、もう後は
ないのだった。それを逃がすと、もう帰れな
くなるのだった。始まりの場で最終を待つ。
その不思議にうたれて、俺 ....
遠いものたちが
ばらばらになって
散らばり
それぞれに互いがわからなくなると
世界はいったん
完成されたような
そぶりを見せる
燃えたあとの灰のように
のこったまま
離れを保って
 ....
燃えたあとには
かわいた灰だけがのこる

開いた森に
自らに似たものが
点々と横たわり
その足跡のようなくぼみの
ひとつ、ひとつ、に
降りつもるものがある

それらがどのように
 ....
僕たちは見ていた
星を
  夜の
    空の
それぞれの 星を
見ることで
何かが晴れ渡るわけではないけれど
僕たちは星を見ていた

夜の暗さのどこにも
それぞれの気持ちを投影す ....
それにしても、夏は暑い。この国には火葬と
いう習慣があって、それは宗教的な起源を持
つものではあるが、文字通りいまや習慣とし
て、その色彩を留めているのみだ。たとえば
他の国では土葬が一般的な ....
{引用=――わらべうた}


空は晴れていました。それはもう、
実にみごとに晴れわたっていまし
た。僕(子供)は逆上がりができ
なくて、学校でみんなから笑われ
て、からかわれて、そのせい ....
だあれもいない夜に私はたっています
それは夜のくらさのためではなく
そのくらさが私の影とまじりあうからでもなく
ただ私がどんなものともつながっていない
無縁のものだからなのです

とおくふ ....
{画像=100518032154.jpg}

幽霊坂という名前の坂は、東京都内にいくつも点在、
していて、神田淡路町、目白台、三田、田端など、に
ある。これらの幽霊坂は昼なお薄暗く幽霊でも、出 ....
{引用=――昔の旅を思い出して}


海沿いの
裏の国をさまよっていた
背後に山が迫る狭い平地で
当然のように道に迷った

時はゆっくりと勾配し
私に追いつきつつあった
いくつかの ....
 ここのところ、詩をやることに少し疲れている。詩を書くことに、ではない。詩をやることにだ。詩を書くだけなら、いつでもそういう気持ちになることは出来る(もっとも、僕の場合は気分屋で、おまけに面倒臭がりの ....  詩を書き始めてから四半世紀以上になるが、いまだにこうすれば詩が書けるという方法論を持たない。そのくせ、詩を書きたい、書かなければならないという、妙な切迫感のようなものにずっと追い立てられている。そし .... 季節の変り目には
雨がよく降る
いまがまさにそうで
冬から春へと
季節がわたろうとしている
そういえばあいつも
こんな時に死んだのだったな
そう思ってまだかたい
桜のつぼみを見上げる
 ....
こんなふうに
手足が生えそろって
二つの目と耳があり
呼吸も嚥下もでき
発語さえできる口があるのは
不思議なことだ
それが人間の
かたちとして当たり前に
認められているのも
不思議な ....
生まれる
ずっとまえから
さまざまの小さな
かけらたちがあつまって
この心身をかたち
つくってきていた
それらの小さないのちたちの集積で
ここにいるほどよい大きさのいのちがある
その後 ....
 自分にとって詩とは何なのかということを考える時、必ずと言っていいほど詩と詩ではないものとの二項対立の図式を思い浮かべてしまう。これは思考のパターンとしてある種の悪癖であるのかもしれないし、安易な思考 ....

 社会には様々な個性を持った人が住んでいて、その個性の色合いは千差万別だ。まったく同じ性質の人間は二人といないのであり、それぞれが唯一無二のかけがえのない個性を備えた、取替えの利かない個人で ....


 言うまでもないことだが、道に迷うことは人の心に不安をもたらす。すべて不安というものは未知のものへの恐怖から来るものだが、道に迷うのはこの一点からあの一点へとある目的を持って移動するその途中 ....
 日本の詩が人々にどのように受け取られてきたかという詩の受容の歴史を考えると、近代詩と現代詩の間で大きな切断線が横たわっているのを誰しも感じざるをえないだろう。それは、近代詩は人々の間に幅広く受け入れ .... くるっても
いいのだろうか
という言葉をおしころして
公園へむかう

身ぐるみはがれる
とはこんな気分だろうか
この身をくるんでいた
ものたちはどこにいるのか
いまも元気で
やって ....
誰も待ってくれないから
みんな子供であることを
あきらめるしかなかった
そうして前を見て進み汗をかいては
花の色でさえも忘れていった
たがいの溝を埋めあっても
ひとりずつは変らず小さく
 ....
たかく、ながく、ら、をさけぶ、さけべばか
みふぶき、まい、つむじかぜ、ふきすぎる、
いるかのはだは、つるつるにかわいて、うら
ぎるせいてんのひかりを、すかしみる、ら、
をよべば、こたえるはなび ....
水のように流れ
人のように往来した
そのほとりからいくつもの
日常と非情がわき上がり
その沿線はいつもどこか湿っている
鬼門に向かって伸び
裏鬼門へと帰ってゆく
その繰り返しの中から
 ....
遠くから見ると
家々の灯りが山裾に
へばりつくように
つらなっているのが見える

あれらの灯りは私ひとりの
いのちよりも長く生きるだろう
ひとりが斃れふたりが斃れ
世代の交代があったと ....
岡部淳太郎(315)
タイトル カテゴリ Point 日付
遺骨自由詩8*11/5/29 20:06
影絵自由詩1111/5/17 6:56
眠ることで[group]自由詩4*11/3/26 20:09
小さな君への挨拶自由詩17*11/3/14 2:37
点描癖自由詩211/1/5 18:08
黄昏自由詩210/11/20 6:57
見送る自由詩310/11/8 21:17
瞬間[group]自由詩310/9/28 7:00
遠いものたちが自由詩710/9/23 22:57
秋の地図自由詩410/9/19 0:03
星を見る人自由詩910/9/7 6:48
火葬[group]自由詩210/8/24 22:42
幽霊のひもの[group]自由詩20*10/6/11 5:21
無縁仏[group]自由詩410/5/23 22:19
幽霊坂[group]自由詩810/5/18 7:43
ありえない場所自由詩410/5/6 6:46
詩をたたきのめす散文(批評 ...7+10/4/12 1:10
詩の書き方を求めて散文(批評 ...2+10/4/5 16:35
季節[group]自由詩310/3/26 21:24
人間のかたち自由詩710/3/9 17:54
拾得自由詩310/2/17 23:21
詩が沈黙する時散文(批評 ...5+*10/1/18 22:01
【批評祭参加作品】うたう者は疎外する/される[group]散文(批評 ...310/1/12 22:42
【批評祭参加作品】迷子論序説[group]散文(批評 ...310/1/10 21:58
【批評祭参加作品】近代詩と現代詩の受容の違いについて[group]散文(批評 ...4*10/1/9 20:17
樹木自由詩509/12/4 22:04
必罰自由詩809/9/6 18:34
音楽[group]自由詩309/9/3 22:34
小田急線自由詩3+09/8/31 7:28
灯りのつらなり自由詩409/8/28 12:56

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