七月になりたい
すべてを消しつくす激しい雨と
すべてを輝かせるいちばん眩しい陽射しと





{引用=個人詩集「透明塔より」掲載}
この夜に砂糖とミルク少々を入れて
掻き混ぜて飲み干すんだ
――君 何処へ行きたいか云ってくれ給え
ラズベリィの憂愁に
しなやかさの極みの鋭さを閃かせ
僕らを駆動する
僕らが駆動する
{ル ....
夏が来る
とりどりの宝石が波うつような
きらめきとあざやかさを纏って夏が来る

いつもはただのフェイクとしか思えない
この生命にもすべての感情にも
夏だけは流し込んでくれる――本当だと思え ....
暗い空から吊り下げられている
いくつもの虹色の絶望のシャンデリア
時にそれが奇妙なほど
美しく煌いて見えてしまう

灰色の道は沈黙のように続いていて
その上を歩いている
黒いハットと黒い ....
空は仄かに薔薇色を帯びたグレイ
雨は降りそうで降らず
六月の気怠いカーテンを揺らして
私の哀しみを主題する風が吹く

その波紋する緩急を肌に感じながら
ただ横たわっている
あじさいは咲く ....
その午後に
虹色の球体と
銀で縁取られた黒の正三角形と
無色透明の六角錐とが
話していたことは
宙吊りになった中庭に
置く角度を間違えられたまま
置かれている白い日時計のことであった
 ....
   {引用=inspired by「metropolis」L'Arc-en-Ciel}


数か月前から僕は
あるアンドロイドと暮らしている
名前は{ルビ零=れい}
零は性を持たない ....
胸の中の灰色の重たるい空に
気怠く浮かぶとりどりの飴玉のような
飛行船の数を数える
数えたそばから何度でも忘れるために
塔を隠した樹々たちがくりかえす
やわらかな墜落

螺鈿の微笑を浮かべる遊星たちが
結晶状に形成する空間に
浮かべられた白い柱廊に
並べられたフラスコ

時折それらのいくつかの中で
新 ....
世界の終わりを思わせるほど明るい日
地の果てのようながらんとした広野に
世を捨てたようにひとつ立つ古い塔のそばで
君は僕を待っていた

僕らは手をつないでだまって塔をのぼった
ひょっとして ....
春という季節は
いつでも液状にデフォルメされてゆく
匂い立つ色彩が
にじみ流れ溶けあい渦巻く
私の輪郭もそのただなかに
半ばは溶けかかりながら
けれど決して溶けきることはなく
冬をいとお ....
菱形の額縁に入れておいた
つぶらな瞳をもつ心臓が
ある日 部屋からいなくなっていた
少しばかりそのあたりを探したけれど
見つからないので
仕方なくいったん部屋に戻って
お茶を飲んでいると
 ....
いちばん古い棟へとつづく渡り廊下は
いつもひっそりとしている
ことに雨の日には
この渡り廊下だけが離れて
雨降る宙の中に 浮かんでいるような気になる
  《ここで語り合ったこと
  《ここ ....
白くつめたい指が摘んだ菫の花束
破綻をつづけるイノセンス
誰にもわからない時を刻む時計
虹色に震えながら遊離してゆく旋律
救いの無いシナリオ
かすかに聴こえる古いオルゴール
のようなノスタ ....
君という雨に打たれて
私のあらゆる界面で
透明な細胞たちが
つぎつぎと覚醒してゆく

 夏の朝
 影に縁取られた街路
 やわらかな緑の丘
 乾いたプラットフォーム
 きらめきに溢れた ....
灰緑の部屋で 私たちは
話をしている
天井や壁に貼りつけた
太陽や月や星たちを
そろそろ違う場所に
貼りかえようか と

私たちは長らく
この部屋に棲んでいる
いや あるいは
この ....
舞台の上に寝台
そこにひとつの意志が 表面に暈色をまとい
硬質な眠りを眠っている

舞台にはさまざまな役者が登場しまた去り
時に祭りのにぎやかさに溢れかえる
けれど意志は眠りつづけている
 ....
風は暗がりから吹く
私の影は滴りつづける

誰も居ない
かつて誰かが居たかもしれない
そのわずかな痕跡も
とうの昔に温度を失い

記憶を失い

頭上には黒い星座たち

ただ脳裏 ....
身のまわりのひとところが
なんだか前よりも
がらんとあかるくなった気がするのは
そこに虚無がひとつ
生まれていたためだった
私はいまだその大きさも輪郭もつかめず
いつかつかめる日がくるかど ....
場末の小さな店を出ると
もう真夜中のはずなのに
不思議とあたりは白っぽく明るい
街灯もひとつもともっていない
しかし明るいとはいえ太陽がないので
なんだか昼間とはちがった
さびしい明るさだ ....
壁を自在に移動する窓
持ち歩き可能な窓

心臓に取り付けるための窓

蜃気楼だけが見える窓

窓硝子に詩を書くための窓
叩き壊しても何度でも再生する窓

脱け出すためだけの窓
忍 ....
{引用=*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目の語 ....
僕の黒いノートの表紙に
ときどき
窓が出来ていることがある
その向こうで
君のかなしみが
淡い落下をいつまでもつづけている
(背景はいつも夏の
 {ルビ誰彼時=たそがれどき}か
 {ル ....
昨日は其処には無かった窓から
招待状を携えて
使者の使者があらわれた
見おろすと路上はすっかり{ルビ鈍色=にびいろ}の流動体と化していて
あちこちのビルの歪んだ非常階段に
コロスが点在してい ....
そしてオレは
其処から脱け出すために
時間をかけて 翼を造ったのだ
羽毛のかわりに 小さなナイフをたくさん繋ぎ合わせ
銀色に鋭く{ルビ煌=きらめ}く翼を造ったのだ

それを造っ ....
旅をつづけるほどに
私たちの旗は透明になり
時折見いだす標にしるされた言葉も
少なく 暗示的になっていった
夜の傾斜をくだってゆく
くだるたびに傾きがちがうような
いつもおなじような気がする

夜だから傾斜は暗い
ところどころに湿った火がともっている
そのそばにその火を嘗める獣が
いたり
い ....
オパール・グリーンの夜明け
褪めた窓
虚空を漂う巨大なビルボード
モノトーンの呟き
夢の露頭
遠い風
コロイド状の街燈の光
見えない傷と瑕
古びたソファー
非在の時空に架けるピンクの ....
浅い午睡に
思いがけず野蛮な夢をみる
それを誰かのせいにしてみたところで仕方ない
けれど

ああ
夏が甘く爛れる匂いがする
それは私の倦怠と
なまぬるく混ざりあってゆく

何もかも ....
また夏がめぐり来て
空も緑も色深まり
光と影が幻のようにあざやかに世界を象っています

夏の花々も色が強く
私には似合わないのです
降りそそぐ{ルビ眩=まばゆ}さと熱にも
ただただ圧倒さ ....
塔野夏子(458)
タイトル カテゴリ Point 日付
七月になりたい[group]自由詩4*07/7/21 12:06
DRIVE自由詩12*07/7/7 18:28
夏と私[group]自由詩8*07/7/1 11:42
黒の歩行者自由詩4*07/6/23 14:30
変奏曲自由詩7*07/6/17 11:25
空白的な午後自由詩7*07/6/5 17:48
愛の夢自由詩6*07/5/27 11:21
春の消閑[group]自由詩17*07/5/13 13:05
実験室65−F自由詩10*07/5/1 17:25
明るい日自由詩9*07/4/25 12:02
春の抽象[group]自由詩10*07/4/1 18:36
春の額縁[group]自由詩6*07/3/25 14:06
雨の日の渡り廊下[group]自由詩10*07/3/19 18:32
処方箋自由詩12*07/3/11 12:28
約 束自由詩30*07/2/25 22:42
灰緑の部屋で 私たちは自由詩15*07/2/11 18:31
劇 場   Ⅱ自由詩3*07/1/27 16:46
黒い星座自由詩10*07/1/13 18:20
虚無をめぐる予測自由詩9*07/1/7 18:06
明るい真夜中自由詩11*06/12/27 18:39
窓のカタログ自由詩15*06/12/17 21:59
四行連詩 独吟 <模様>の巻[group]自由詩10*06/12/5 21:54
黒いノート自由詩21*06/11/19 18:42
611号室への招待状自由詩6*06/10/15 11:08
Monologue in the Shadow自由詩4*06/10/7 13:15
世界の核 あるいは果てへ自由詩8*06/9/29 21:42
夜の傾斜自由詩14*06/9/3 16:17
MOSAIC #71自由詩4*06/8/19 18:06
懶 惰[group]自由詩7*06/8/11 23:12
夏に還る[group]自由詩14*06/8/5 13:34

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