君と会ったら
君と交わす言葉で
森を作ろう
いろんな樹がざわめいて
ざわめきの中から 光がこぼれてくる森を

君も(そう 君でさえも)
僕を救うことはきっとできない
けれどそれでも君が ....
オレはざわめきの粒子に身体を打たせようと
再び青い扉を開ける
精神に帆をあげて進んでゆく
可憐な狂気が束の間の夢を羽ばたかせている
物憂げな空には最後の揺籃が揺れている
噴水広場には優し気な ....
僕の住む街の近くに
緑の草におおわれた丘があって
その頂には飛行船のなる樹が立っている

枝々に
最初は小さな小さな 飛行船がぶらさがって
そして日に日に 少しずつ大きくなってゆく
その ....
見わたす夕空は
{ルビ菫青石=アイオライト} {ルビ藍晶石=カイアナイト} {ルビ天青石=セレスタイト}のモザイクです
君の微笑みに
さびしい火がともります
ああそのせいか
君の黒い外套 黒 ....
街の空に
モノトーンの虹
夜が来れば
乾いた月がのぼる
この窓も枯れてしまった
無造作にガラスのコップに挿した
一輪のピンクのガーベラだけは
鮮やかに浮かんでいるけれども
街はずれの丘 ....
壊れた時計をいくつか
この部屋に飼っているので
どうやら時空にちょっとした罅が入ってしまったらしい
ふいに宙の思いがけないところから
時ならぬクロッカスの花が咲いたり
誰のものとも知れぬ指た ....
空には虹色をした魚の天使たちが満ち
人々は時々輪郭を失くしながら行き交っている
その人々のあいだを
宛名を手書きされた手紙たちが
それぞれの行き先へと急いでいるのが見える
街はずれの丘の上で ....
かたちのない宝石を
手のひらで転がす九月の午後
孔雀たちはまどろんでいる
淡く実る葡萄の夢を見ながら
この過剰なしかし稀薄な世界たちの中で
見張り塔から
いったい誰が何を見ている?
何が見えていても無駄かもしれない
かたちの無い革命もどきが
気づくと僕らの意識を下から暗く蝕んでいる
そんな ....
白く 夏が終わりはじめている

僕らのいるこの部屋も

白い宙になかば浮いたカプセルみたいだ

窓の遠くから

世界の破片で遊ぶ子どもたちの声が

聞こえる

その声もなんだか ....
そして今年もまた夏が此の世を
残酷に覆い尽くしてゆく
夏は光と影の鋭い{ルビ刃=やいば}で
其処彼処抉り取ってゆくから
見渡す景色は狂おしいほど彫り深くなり
抉られた処から噴き出すように
 ....
――青空に白く輝く雲の塔
  降りしきる蝉の声
  激しい夕立
  長い夕映え
  潤むような硝子の星々――

見えない額縁に
あざやかに切り取られた
今この時 に
記憶と予感とがふ ....
頂点を仄青く明滅させる三角形が
部屋の片隅に居る

銀のお手玉をしながら
華奢なアルルカンが宙を歩いて過ぎる

星のいくつかが
音符に変わり また戻る

硝子瓶がひとりでに傾き
グ ....
カムパネルラの瞳が
どこからかしずかにみおろしているような星空

君の沈黙 君の横顔
それはなにかうつくしく けれどものがなしい
予感に満ちているようで
僕も黙ったままでいる

僕の脳 ....
窓枠は白く
午後のものうさの
界面に浮かんで

俯く薄紫のアガパンサス

灰色の雨の空を
半透明の船が
ゆっくりとよぎる

丘は遠くに緑の横貌を見せて

そのさらに遠く
おそ ....
日も月もない白い空と
ただ静かな灰色の地
その地平を 巡礼のように
椅子たちが列をなし 何処かへと進んでゆく
初夏の風がゆるやかに舞い込む白い部屋で
微睡む少年
本を読む青年

壁には無造作に留め付けられた
幾枚かのモノクロームの写真
天井から吊り下がるのは
模型の銀色の飛行船

窓近くの硝 ....
ふたり歩む小径にも
ふたりくぐるアーチにも
薔薇たちは咲き誇り 香りはあふれ
胸の想いも 互いの声音や眼差しも
薔薇の魔法を帯びて かなしいほど甘やかに染まり
この園がいっそ迷宮と化せばいい ....
青ざめた薔薇の横貌
月を相手にパントマイムするアルルカン
時計塔の溜息
幾重にも自己複製する記憶
仄昏いカルテ
見えない翼の天使
森の浮遊
虚空を音もなく走る硝子の列車
白い小鳥が描か ....
柵に沿って並べられたプランターには
とりどりのチューリップ
此処は白い建物の屋上

見あげる空も白い
其処には半透明の歯車がいくつか
組み合わさってゆっくりと回っている

それらは多分 ....
私の形をした枠から
ふいに
私が外れ 崩れて落ちた

枠だけが 静かに残った
桜の花が咲く 花が散る
花の影がわたしを斑に染める

晴れた空はうつろに息づいている
わたしにきららかな憂愁が降る

胸のうちをほの白い人の列がゆく
半透明に やや蒼ざめた横貌を見せて
 ....
白い光がふちどる窓辺で

二人はふるえる菫の口づけを交わす

二つの華奢な心臓が

透きとおってしまいそうだ
こんにちはさよなら きっとまた会おう
君がそれをまだ信じてるなら なんて切ない
灰色の木洩れ日 小さな湖
手を振って笑って
次はいつどこで会うかわからない それが素敵
思うようにうまく歩けな ....
{引用=*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目の語 ....
心臓がわりに林檎を胸に嵌め
黒い帽子をかぶって初冬の街を歩いてゆく
たわむれに
   花の音
      風の色
   君のまなざし
      この胸に滲むよ
   からみあう
あやとりのように
   指と指
      結界して
   たわむれに ....
左手の五本の指から
毛細血管が夜空へと伸びはじめ
またたく間に
満月に絡みつきました
そして葉のない蔓草のように
月の表面を覆い尽くし
月光に透かされて
赤く綺麗に見えました

まも ....
時の棘が蒼い
硝子窓は中空で沈黙している

ゆっくりと沁みとおる夜の重量

稀薄な我の裏側に貼りつく
濃密な我

深淵で暗い薔薇がひらく
鈍色の魚が円を描いて泳ぐ

記憶の闇を抱 ....
窓の遠くでコスモスが揺れざわめいている
君はそこへ行きたいと云う

行くがいい 君になら似合うだろう
あの優しい色あいも それを揺らす風も
すべてを照らす初秋のあかるい陽射しも

僕はこ ....
塔野夏子(458)
タイトル カテゴリ Point 日付
幾千のノイズをくぐり抜けて自由詩5*10/12/29 20:36
遊歩者自由詩4*10/12/15 20:09
飛行船のなる樹自由詩9*10/12/1 21:00
冬の高台にて自由詩5*10/11/21 21:26
モノトーンの虹自由詩3*10/11/7 11:16
出現者たち自由詩13*10/10/21 20:30
夕刻 三角広場のベンチにて自由詩7+*10/10/11 20:27
中 庭自由詩17*10/9/29 20:35
見張り塔から自由詩4*10/9/25 18:14
31.5℃[group]自由詩5*10/8/15 12:14
夏 極[group]自由詩5*10/8/7 22:37
夏の聖域[group]自由詩3*10/7/29 18:01
現象:或る七月の夜自由詩7*10/7/19 21:11
カムパネルラの瞳自由詩8*10/7/11 11:46
七月一日[group]自由詩3*10/7/5 20:20
旅 景自由詩6*10/6/19 20:16
少年と青年と飛行船自由詩2*10/6/7 20:09
薔薇園自由詩12*10/5/29 20:57
優雅なる憂鬱自由詩7*10/5/5 11:05
春の屋上[group]自由詩2*10/4/25 21:40
墓 標自由詩3*10/4/17 20:28
桜 時[group]自由詩5*10/3/29 20:21
早春小曲[group]自由詩4*10/3/11 20:27
あたたかい夢自由詩8*10/2/9 20:34
四行連詩 独吟 <星>の巻[group]自由詩7*10/1/3 18:32
散歩オブジェ自由詩3*09/12/17 17:43
流 連自由詩3*09/11/29 17:54
月と毛細血管自由詩3*09/11/1 12:21
夜の意識自由詩2*09/10/13 11:22
COSMOS自由詩5*09/9/29 21:05

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