懐かしい、温かな風は
もういない


はしゃいでも、ひとり
つくろっても、ひとり

つぶやくほどに、
黙り込むほどに。


嘆いたら、塞いだら
すくわれる、かな

 ....
水に編まれた者たちは
銀の縛りを解きたく
銀の向こうの
金色を請う
その
或る種の隷属がもたらす
透明な階級

整い過ぎた軋轢を
整え切れぬまま
王冠は
かろうじて
霧の中 ....
雪のなかにあらわれる
物語
色もなく
声もなく
ただ
ただ
素直な物語

わたしの指に
たとえ消えてしまっても
物語までは
なくならない
それが


誰かの灯りに
 ....
遠くを見ていると
そこに至るまでの道のりが
ないもののように
錯覚してしまう

けれど
その錯覚が
誤りだとは言い切れない
正しいこととも
言い切れない

わからないこと ....
一瞬を

その身に
耐えうるだけの一瞬を
凍れる花は
抱き締める

その
抱き締める力に比例して
花の強度は
もろさを
高めて

誰、と決めずに

凍れる花は
誰、 ....
変幻自在なあやしさを
とにかく、すぐにも
体得したいね

敵があるのが仕方ないなら
そうしてかわしたいものだね


矢継ぎ早に寄せる白目には
理路整然と語るしかないね

 ....
数えきれない星座のようなきみが
言いようもなく妬ましかった

放課後の教室に射す茜の切なささえも
きみは上手に味方につけている気がして
ぼくは焦りだけを募らせていた


裏切ること ....
かるく、かるく、
つかれる羽は
かつて
どこかの空でした

あかるく、かるく、
つかれる羽は
かつて
どこかの水でした

まあるく、まるく
つかれる羽は
かつて
どこかの ....
砂の城は
潮風にだけ開かれている

砂の城は
形あるものを招きはしない

そのことに
気づいたものたちは
ゆっくり砂へと戻りはじめる

そして
それらの隙間へ
およぶ視線た ....
あんよが出来たら
いい子いい子

おさかな食べたら
いい子いい子

幼い子どもを褒めるはやすし


着替えが出来たら
いい子いい子

なまえが言えたら
いい子いい子

 ....
嫌いなものになろうと
おもう

嫌いなものになれたなら
嫌わずに済むとおもう
もう、きっと

好きに
なり始めるとおもう
ようやっと

嫌いなものになろうと
おもう
 ....
むなしい言葉の重なりに
わたしのあなたは
あらわれます

のぞんだ言葉の重なりに
わたしのあなたは
あらわれます



きれいな言葉の重なりに
あなたのわたしが
あらわ ....
うつくしく帰れ、と
はかない願いを込めた
ささやかな窓辺は
永遠に失われない

ただし、代償はある

例えばそれは
老いる瞳

例えばそれは
老いる瞳の中の
いつわらざる面 ....
海岸線を走ると
凍てついた汽水の上に
オオワシが
見える

車通りのまばらな国道に吹く風は
きょうも横なぐり

どんなに晴天だろうと
いや、澄めば澄むほどに
ハンドルを
とら ....
聞き耳を立てていた

厳しい言葉の迫る気配に
責める言葉の
迫る気配に

聞き耳を立てて
いた



口裏を合わせていた

障りのない言葉をえらび取り
結論付けない ....
ふしぎな生きものが対岸におりましたので
わたしは急いで脱ぎました

なるべく丁寧に急いで
わたしはあらわになりました


しかしながら
湯茶の用意が整っておらず
先方はやや訝しげ ....
わたしの母は
一流の歌謡曲なのであります

酸いも甘いも知り尽くし
いまや図太く
強固です


わたしの父も
一流の歌謡曲なのであります

優しく厳しく漕ぎわたり
よう ....
もう
あの船の行方なら
わたしの胸に描かれるしかありません

その
描きようの総てが許されるわけではなくて
それでも
描いていくしかなくて
ひとり
色をもたない潮風に
抱かれて ....
十年前は
だれを好いていただろう

十年前は
どこに暮らしていただろう

一年、二年で気が変わり
三年、四年で空気が変わり

五年、六年、見た目が変わり
七年、八年、言葉が ....
反論がある、ってことは
温かいよね

ひねくれ者でも
あげ足取りでも

相手になってくれるだけ
感謝しなきゃね




雨のなかを、さ
わめきながら駆けぬけるのは
 ....
愛の映らぬ鏡があろうか

愛無き涙も
愛無き悔いもないならば

愛の映らぬ鏡があろうか



その背がいかに重くとも
その背がいかに暗くとも
それを見据えるお前の眼だけは ....
幾重にも
連なってゆく
痛みの無言に慣れてしまう
その痛み

それは
誰にも明かせないから
誰もがみんな
重たく齢を
重ねる


褒美のような光の背には
忘れられ過ぎた美 ....
きっと
模倣にすぎない涙です


人づてに
色づけされる涙です


やがては
無かったことになる
涙です


空へと昇り
空から下りなおす
涙です


だれ ....
かなしみは
凍てついたりしないから
いつまで経っても
わたしは
楽になれずに
ひどく体温をうばわれる


硬いものなら
落としてしまえば終わりにできる

手から放して
決別 ....
手毬とよく似た
日輪の影

不浄を仰ぐやわらかな羽

いつか、どこか、で
お会いしましたか

生まれたばかりの蓄音機
美辞麗句には見向きもしない

辛辣な役割を辛辣とは語らない、それ

鋭い爪の持ち主を幾つも知りながら

それは決して暴かない
つめたい風が
頬に突きささるように
真っすぐで

それは
あまりに
迷いのない有り様で
わたしには逆らう手立てがない



気まぐれ風味に
夜空をみあげれば
きら星が澄み ....
空は
だれの言葉も聴いていない

雪の語りも
風の遊びも
なにひとつ聴いていない


大地は
だれにも組しない

黙りこむ愛にも
困り果てた踵にも
まったく味方しない ....
いつか
もう一度逢えたなら
忘れたふりで
笑み交わそう

望みを叶えた二人じゃないけれど
間違えたわけではないからね
総てを無かったことになど
出来るはずもない

ただ
 ....
ほんの
ひと握りの間に
つたえられる想いなど
わずか数行

わびるにも
しのぶにも
なぐさめるにも
たしなめるにも

ひとは
それほど多くを
持ち得ないから
大切 ....
千波 一也(758)
タイトル カテゴリ Point 日付
闘いと呼ぼう自由詩114/2/13 7:59
水の冠[group]自由詩014/2/12 11:51
雪わたり自由詩114/2/11 10:20
望遠鏡自由詩214/2/10 19:11
凍れる花自由詩114/2/10 9:20
夢だもの自由詩414/2/7 20:09
追いつけるなら自由詩414/2/6 16:06
羽つき自由詩614/2/6 13:09
砂の城自由詩214/2/5 15:46
いい子いい子自由詩114/2/4 17:28
嫌いなもの自由詩114/2/3 22:18
祝辞自由詩114/2/1 20:08
伝書鳩自由詩214/1/31 7:54
トーチカ自由詩314/1/30 18:02
放射冷却自由詩614/1/29 21:50
対岸自由詩614/1/29 15:35
歌謡曲になりたい自由詩214/1/28 22:34
アンコール自由詩414/1/28 17:12
十年愛自由詩414/1/27 13:33
自由詩214/1/26 9:31
子守唄自由詩314/1/24 22:43
影うた自由詩314/1/24 16:39
涙とおぼしきもの自由詩714/1/23 15:58
砕氷船自由詩414/1/22 17:39
金糸雀自由詩414/1/22 0:12
風見鶏自由詩214/1/21 18:54
はいはい。自由詩214/1/20 18:09
冬凪自由詩214/1/20 15:50
忘れたふりで自由詩214/1/17 10:28
わずか数行自由詩414/1/15 17:19

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