いつだって
箱の底に
残っている
ひとつ

とろける、喉に絡みつく、朝焼けの甘やかな、桃色
足掻くように過ごす、ふつうのひとができることをわたしはできない、晴れる昼、淡い水色
-雨の日は ....
 私は女刺客として育てられた。

 数百年この国は、贅をつくす不死の王家に支配され、民草は汁を吸われつくしてきた。
 老人も、働きざかりのはずの男女の顔も、暗い影におおわれている。聞こえて来るの ....
赤い鳥居にシャラン鈴の音
綺麗に舞う黒髪の巫女さん
おしまいに飲んだ御神酒に
ほかりあたたまり赤らむ頬
わたしの厄は去ったかしら
まっ白な梅の花がひとひら
地に落ちるをぼうっと追う
すこ ....
とてもかなしい事件があって
きいているだけで涙がでた

小さい赤ちゃんが両親に
ウサギの檻にとじこめられ
弱って
死んだ

ニュースに耳をふさぐわたしにきみが
これから大切なのはこと ....
 細い細い青い糸のような雨がまっすぐに落ちていて、周りは湿り気をおびた青灰色の世界だった。
 私は巨大な石造りの、崩れ落ちかけた円形闘技場の、座るのにちょうどいい四角い石にちょこんと乗って、しめった ....
下弦の月から放たれたように
斜めに白い線が奔っていた
夜の飛行機雲

こんな時間帯に
ずいぶんと低空に飛ばしている
旅客機か
観測機だろうか、と、君がいって
わたしは感心してたちどまる ....
怖い夢を見て
こむら返りして
いててってなった

ひとりなので足のつま先を
顔のほうへ曲げてくれる人がいない

昨日まで雪の降るまちにいて
彼の仕事の手伝いをしていて
たくさん食器を ....
となりでこんこんとねむっている君は
いま、夢の旅のどこらにいて
どんな風景を見ているのだろうか

空を飛んでいるのかな
くらい深い海に潜っている?
なにしろきみは獣だから
草原を走ってい ....
 朝日が昇ります。夜の黒に近い藍色を押しのけ、宝石のように透き通った朝の赤が空を染めています。砂丘の色はまだ、黒。赤と黒のコントラストは、流れ出す傷とかたまったかさぶたのように美しい。つぎに瞬きすると .... わたしはきっと見たことがある
祖母の灰色の目をとおしてだけれど
B29がつきぬけるように真っ青な
雲一つない空をはしってゆくのを

疎開するため
汽車で広島を出るとこだった
ちいさな伯母 ....
ずっとあなたを探していました
ながすぎるほどのときでした

目は赤く腫れあがり
世界に火を放ちたいほど呪詛吐いた
赤錆の匂いはつきまとい離れずに
そろそろ、いいか、とおもうころ

わた ....
1.
いつから
足りていないものばかりを
指折り数えて呪い

2.
消え入りそうな風のわたしは
どっしりとした海のあなたに安らいで
ゆるり 守られ
はじめて 安息し
ながいながい淡 ....
 私は中学を出て、友人の家を転々としながら生きていた。時たま家に帰ったけれど、親は何も言わない。マンションの台所のテーブルやそこらには、たっぷりの食事やおやつが大量に何日もそのまま置かれ、腐って匂いを .... お母さんがわたしを
おなかに宿したとき

ピンクや赤や白の花が
見渡す限り一面に
あまぁくあまぁくかおって揺れる
夢をいく晩もくりかえしたよ

だから
しらべなくとも
わたしが女の ....
真ッ赤に燃えさかっちまえ
そうして真ッ白に舞い上がれ

灰に膿む空をにらみつけるわたしの目は沁みて

あの横須賀の廃屋のねむりよ
水色の目の車よ、またぐらでやわらかくあたたかく
あたため ....
都会の空に星はなく
赤橙青の電気は偽で
ひとは地を天に変え
心を亡くした表をし
早歩きするカラな音
耳塞がずに耳澄まし
赤橙青の星達を魂に
ともしつづける為に
ことのはを色づけた
しなやかな獣のようだきみは

脂肪のわずかなあたたかなからだ
むしゃむしゃごはんをたべ
わたしをむさぼり
疲れたらひっぱたいても起きずに深くねむり
あしたははたらきにゆくのだろう

眠 ....
1.
色のない空をつんざくようにそびえたつ黒い山脈

真っ黒焦げになった数万の人々が
フライパンの上ゴウゴウと炒られて悲鳴をあげていて
それをしている巨人もまた
焼き爛れて狂って笑いながら ....
きらびやかな金の明かりが木にからみつき
くらい空に昇りゆく

あれは龍

私はいっとき
唐の皇帝よりえらい人になる

ものがなくとも
こころさえあれば
だれだって

唐の皇帝よ ....
1.
ふるい
ふるい人々……

2.
赤い水の中でうずくまる胎児、きみだ

3.
分厚いガラスに閉じ込められて
ゼリーのような水色の
重苦しさの中

少年のきみは自分が苦しいこ ....
うえの部屋の犬はたぶんパグで
飼い主は
水商売の女の人じゃないかな

このごろ寒くなってきて
女の人仕事にいかなくなってきた
誰かと電話をしたら
いつも怒鳴りあいになり
さいご泣いてい ....
抱きしめてくれる人が欲しかった
ゆっくりお眠りと囁いてくれる人
この腕は全てを突き放してしまい
十二月の気温に湯たんぽを抱いて
はだかんぼでお布団に包まり独り
屋根の向こう見えない空を眺める ....
色はくろ
とてもひんやりとしててゴクリ
のみほした

炭酸ジュースのはぜる泡よりおおく
星がパチパチ光ってて

ぜんぶのそらでいっとうあかるい
あおい星
くちびるにひっかかり
わた ....
ひかってるひかってる
秋の心臓が
きらきらとおちてゆく

ふみしめられて
冬飾る金のかざりになってゆくんだ

道をたえず染める心臓たちにまぎれ
秋のふぐりも知らん顔してポトポトと

 ....
あしたは雪が降るそうです
大気がこころを揺らすんだ
あと三日で母が逝った日だ
目が腫れぼったくなる夜中
花柄の枕に涙が沁みて真昼
飛び降りても抱きしめると
窓の外雪が降り積もってた
それ ....
すきな ひとと
のはらで したいな
野いばらで ちくちくしながら
ころげまわって いっぱいしたいな

もりのなかでも 素敵だな
それなら 夜がいいだろな
甘いにおいの はっぱのうえで
 ....
地球が滅びるんじゃないかと
ドヨンと曇った気分だったが
たんに風邪を引いただけなの
枕元に父の差し入れのミカン
ひとりの部屋を温かく照らす
オレンジ色のランプみたいに
とてもとても遠い昔、あるところに、こじきの女の子がいました。

笑うのも泣くのも、おしゃべりも、誰かのお気に入りになるのも得意。

こどものころは大変でしたが、大人になり、乳房が豊かに揺れるこ ....
じいちゃんの亡くなったカミさんが
うえたザクロの木のもとに
実がパッカリあいてころがっていた

皮からあふれ散らばっている実
鬼子母神の澄んだ涙を
庭におりたツグミがうまそうに食んでいる
 ....
「ひとはなぜ生きているのかなぁー?」
「うまれたからさ」
まつりごともかみさまも
しんじないあなたはそういった

戦争に反対するお父さんとお母さん
こどものわたしは
ベトナム帰還兵とおな ....
田中修子(180)
タイトル カテゴリ Point 日付
パンドラ自由詩12*17/2/3 17:49
夢夜、二 「春祭りの日に」散文(批評 ...4*17/2/1 18:59
ことばあそび九自由詩2*17/2/1 2:41
ウサギの檻から抜けて自由詩2*17/1/27 10:51
夢夜、一 「灰色病と、花輪にうずもれるボルゾイの長い首」散文(批評 ...2*17/1/22 20:00
二羽の白い鳥自由詩11*17/1/18 23:12
こむら返り自由詩8*17/1/13 8:31
あまい雨自由詩5*17/1/11 8:10
千年の海散文(批評 ...4*17/1/8 21:36
1945、夏、わたしにつながる歴史自由詩11*17/1/5 21:02
からみあう手自由詩2*16/12/31 2:27
心象風景三 アカラシマの祈り自由詩5*16/12/27 19:59
うみのほね散文(批評 ...7*16/12/26 14:29
散る自由詩5*16/12/24 0:12
風雨の夜自由詩5*16/12/23 0:44
ことばあそび八自由詩2*16/12/22 1:41
獣と鬼火自由詩8*16/12/20 0:56
心象風景二 きみとわたしと自由詩7*16/12/14 21:45
冬の龍自由詩4*16/12/13 21:58
心象風景一 きみと自由詩4*16/12/9 12:37
舞い上がる灰自由詩3*16/12/5 23:28
ことばあそび七自由詩2*16/12/2 2:25
自由詩5*16/11/30 22:09
イチョウとギンナン自由詩5*16/11/29 2:00
ことばあそび六自由詩5*16/11/25 1:56
すきな ひとと自由詩5*16/11/21 18:30
ことばあそび五自由詩1*16/11/19 21:12
赤いぼろきれと蜘蛛散文(批評 ...6*16/11/18 2:32
ザクロと鳥と自由詩5*16/11/18 1:31
陽のようないのり自由詩7*16/11/16 0:44

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