さみしさはすきま
からのポケット
置きざりにされた影

白く柔らかな波で覆い隠し
なにかもみちみちている
そんな人に見えるように
努力している

けれど一分のすきもない人は
これ以 ....
ほしがることがむずかしい
いろいろほしいものがあるのに
舌が糊で貼りついたように
口蓋にくっついて声にできない

夢を語るだけならお金はかからないけど
そこかしこにある断裂によって
わた ....
口を開こうとしてやめ
口を開こうとしてやめ
そのうち億劫になってごろ寝をする

現実が早すぎる
明日も生きるはずだった人たちの時間が断ち切られ
まともな水も食料もない

そんな日々が続 ....
闇のなかへ祈りをポンと放り込む
どこか奥のほうでぱしゃん、と水の音がする

跳ね返ってくるかすかな水音が
応えなのだろう
それを紐解いたりはしないけど


冷える夜に丸くなって眠る
 ....
焼き場で
まだ熱い骨を拾いながら
生きててえらかった
と言う
レエスの縁のハンカチが
小さなポケットからはみ出して

花に埋もれたあなたは
びっくりするほど小さい

いつ終わるのか ....
夢のなかに
大好きだったおじいちゃんがいる
しずかにわたしを見つめている
なにかを言いたくて
なにも言えず
冬は皮膚がかたくなる

さみしさを大切に抱きしめて丸くなる
さむいよ
また ....
なにになるのかわからぬまま
船を漕ぎださなければならない

河岸を変え
肉に刃を入れ
針を刺し
名をあらため
これまでの日誌は燃やした

空は暗く北極星もない
羅針盤はくるくる回り ....
いま生きながら埋葬されている
あなた
血の滲んだ手で墓掘りのスコップを握ってる
それもあなた

あなたのお葬式は
だれも知らないうちに行われる
正しい名が呼ばれることもなく
墓標もない ....
爪を剥がす
わたしの指は二十本あるので
二十回できる

それはやさしさの残機

不安に駆られるゆうべは
脳を取り出して洗う
ホームセンターで売ってた一番強い漂白剤に浸けて
洗面台でじ ....
日が暮れてひとりの棲み家に戻る
靴を脱ぎ
1Kのアパートのなか
フローリングに膝をつき
頭を垂れる

声もなく
神すら必要としない
祈り

どうかあしたも日が昇ってください
いや ....
岩の破れ目が血を流す
昔ここで殺された人がいた

岩を鉄槌で砕いて
削る
あなたが付け足した余分なわたしを削る

有名な魔女の判別方法
水に沈めて浮かんでこなかったやつはシロ
浮かん ....
よる、おばけがくる
わたしのほほを撫で
のどを撫で
よく使い込まれて
されど清潔なリネンのやわらかさで
わたしの心臓を撫でる

わたしのまぶたはとじたまま
そこにおばけがいる

蝋 ....
わたしが死んだらねわたしのお骨を砕いて毎日たべてね
とおかあさんは言った
わたしに根を下ろし生きたお墓にしたいおかあさん
でもね
わたしはあなたの土じゃないの

あなたが赤ちゃんを産んだら ....
手が止まる四角い欄に○できず、死角透明SILENT=DEATH

マイナスをゼロにするためマイナスに近づく預金わたしの胸

今流行り、羽根より軽い話題なり。隣りにいます。中年ですが。


 ....
なにひとつ持っていかぬという気持ちで
日々、靴をはき
仕事をし
夕飯の買い物をして
靴をぬぐ

思い出も悲嘆も後悔も
生き残った人たちのもちもので
三途の川の向こうには持ち越せぬ

 ....
魔女はパーティーをする
おとこもおんなも関係なく
みんな赤い靴をはいて
死ぬまで輪になって踊る
叫ぶような歌声
かなしい歓び

輪のそとは
危険だから
出ていけない

手を離さな ....
いぬを飼いたいな
でもいきてるいぬは
死なせてしまいそうで
かなしいし
かわいそうだな

だから
いぬの幽霊を飼いたいな
いぬの幽霊を飼ったら
最高の名前をつけて
毎晩おなじ布団で ....
いままで亡くなったひとびとの
すべての墓に供えるには
花が足りない

そのことをかなしむこともできないほど
墓標は増えつづけている

忘れられた
記されなかった
記憶のなかに
わた ....
きょうのわたしはしにました
あしたのわたしもしぬでしょう
でもまたうまれてきてしまうでしょう
そのようにし いきてきた
「とおこちゃんはしんでるからね
生きなきゃね」
と言う友の
その無邪気で純なやさしさの
受け取り方に戸惑い

そういうあなたは
「もうがんばって生きてるから『生きてね』と言わないでくれ」 ....
わたしの頭蓋をひとつ
ぽこんと叩いてごらんなさい。
きっとがらんがらん、と鳴るでしょう。
空洞なのです。

人が言葉で象られるなら
この空洞にひゅうと風の吹き込んで
体内で反響するものを ....
なにもかもおしまいにする
口にしてはいけない
例のあいつ

わたしは疑っている
道をゆく九分九厘の人が
みんなそいつをふところの隠しにいれているのではないかと

シータとパズーの重ね合 ....
あなたの楽園へ行った人へ
帰ってこないでください

きっとそこでは、なにもかも違うのでしょう
あなたは俗世の言葉を忘れて楽園の言葉を口にする
わたしにはわからない
耳に心地よく華やかな調べ ....
生きているかぎり
食べない人はいない
だれもかれも食べている

そのありようは
そのままその人の日々を反映して

丁寧に手をかけた一汁三菜も
インスタントに湯であたためたものも
凍え ....
わたしは壁のなかに育った
壁の外に
出たことも見たことも聞いたこともなかったが
外があることを知っていた

夏、庇の下に燕がやってくる
燕は夏に来て冬に去る
燕が冬を過ごす地がどこかにあ ....
もの言えば唇寒し秋の風
というのは芭蕉の句
けれど、秋の風の吹きやんだことがあっただろうか
なんだかずっと暴風雨のなかにいるようで

誰もが服の下に
生々しく湯気の立つような
肉の腐った ....
ぼくはひとりでなんでもできるよ……!
という稚さを
大人になっても捨てきれず
いや、ますますひどくなり

おさない傲慢さと足りなさが
反響し
一個の駒のようにまわっている
ぐらぐらと今 ....
血を吸うな吸血鬼
おまえは蛭のように
皮膚にとりつき離れない

おまえは不幸なことに
好いた人間の血しか吸えぬと言う

血を吸うな吸血鬼
おまえが好いた人が死んでも悲しむな
それはお ....
螺旋階段と信じて歩を進めてきたのに
それはネズミの回し車だったのだろうか
歩んでいる感覚さえあればいいと勘違いして

だれもが感傷的でうんざりする

行く先を見誤れば、それは己の尾を追いか ....
拝啓と書く
敬具で〆る

小学生のとき
電話とメールというメディアの違いを考えよ、という課題があった
今はもう、そのどれもがふるい
既読がつき、いいねがあり
三分の空隙にすら意味がうまれ ....
凍湖(とおこ)(116)
タイトル カテゴリ Point 日付
さみしさはすきま自由詩524/3/30 2:35
ほしがること自由詩624/3/30 0:46
ルート自由詩8*24/3/2 14:38
まどろみ自由詩724/2/3 13:23
熱い箸自由詩524/1/17 23:01
夕方の夢自由詩224/1/13 23:04
越境自由詩623/11/3 18:23
いつしか百年がたち自由詩1323/9/23 20:59
日曜日の家事自由詩823/9/15 15:52
無への祈り自由詩523/9/15 12:02
魔女の判別方法自由詩223/7/6 22:55
おばけの訪い自由詩423/4/28 1:35
わたしを生きたお墓にしたいおかあさん自由詩323/3/12 23:20
沈黙は死。死に続けているクィア短歌短歌223/2/17 23:05
向こうの花畑だけが自由詩1222/12/11 19:08
サバトーー輪になって踊る自由詩322/12/11 15:11
いぬの幽霊を飼いたいな自由詩822/11/24 22:20
いままで亡くなったひとびとの すべての墓に供えるには 花が足 ...自由詩822/11/19 21:21
そのようにし自由詩222/11/4 21:50
友だから自由詩321/12/2 16:46
と成る自由詩221/11/25 13:38
例のあいつ自由詩321/11/2 15:48
あなたの楽園自由詩121/11/2 15:00
だれもかれも食べている自由詩2*21/11/2 14:41
わたしは壁のなかに育ったが自由詩421/10/29 18:59
ただおそれてる自由詩121/10/23 7:03
ままならぬ自由詩221/10/23 3:14
血を吸うな吸血鬼自由詩421/10/21 16:26
きっと外自由詩121/10/15 5:38
文通自由詩1821/10/10 12:56

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