標本になった眼球
         島中 充          
ガラスの向こう そのむこう 窓ガラスのむこうに
水銀灯に照らされ さくらの花が満開でした
風が吹いたのか
さらさら  ....
         1 
優に百メートル超える長い土塀に囲まれた屋敷の前を通って、ぼくは毎朝、小学校へ通った。広い屋敷の庭には松の木や樫の木がうっそうと繁っている。白い土塀のかわらの上に木々が暗い森の ....
    悲鳴
二〇〇三年、高田信也は仕事の都合で夜中、実家から眠っている小学三年生の娘を連れ、堺から岸和田の自宅に臨海線を通ってカローラで帰る。羽衣に差し掛かると右手にステンレスパイプが林立している ....
 中島恭二(島中充)
          プロローグ
気が付くと四角い格子の箱に入れられ菫の花に囲まれた駅前広場にいた。衣服を脱ぎ、こげ茶のタイツをはき、海水パンツをはき、広げると蝙蝠のようになる ....
妻はゆっくり狂い始めた。階下から甲高い声で私を呼ぶのだ。
「アナタァー」 
また始まる、始まってしまった。

開け放たれた窓から、花冷えの寒気がなだれ込み、投げ出された掃除機の横で、妻は床の上 ....
さかなの匂うまちから 黒い袋を抱えて
私は電車の座席にすわっている
黒い袋をおさえて
乗客の視線が私の膝の上に集まっている
おさえても おさえても 黒いゴミ袋が飛び跳ねるのだ
まだ生きている ....
人は
どのように生きてきたかを子孫に知らせたいのだ
知らせなければならないのだ
どのようにして人間は生きてきたかを

私はきのう見た夢の事を思い出していた

海岸に乾物のように干からびた ....
粗大ごみ置き場に 無造作にブリキのバケツにすてられ
つったっている木刀
それは僕たちである

僕は木刀をひきぬき
大声を出して空を切り おもいきり振り回した
それを見て子供たちが笑っている ....
 部屋の隅で黄ばんだ遮光カーテンの襞に、ひっそりと産むものがあった。
真夜中、昏い教科書を閉じて、少年はそれをじっと見つめていた。一匹のゴ
キブリが、濡れたオブラートのような粘液を排泄しながら、卵 ....
その人は初めに水のこころについてはなした
澄んだ水の中からうまれる
詩について
素早く動く魚影を追って
澄んだ水の中にだけ住む言葉を
手掴みにして詩をすくう 

その人は今日 死者の位置 ....
中国山地のなだらかな山の中にその滝はあった。落差が七十メートルを越える白蛇の滝。白く水の落ちるさまが名前の由来である。秋には紅葉の渓谷を、春には桜並木の堤に抱かれて、その美しさは錦と称えられ、錦 .... 薬を与えられ
曝し首にひとつひとつ丁寧に並べられて
菊は咲く
結ぶ露にさえ重すぎて
添え木に縛られ 立ったまま咲いている

花の高さにあなたは背伸びをして
「真夜中にも美しく咲いているの ....
みそかそばのテンプラをひっくり返しながら
正月を刑務所でくらす金物屋金蔵を箸で摘まんでいる

名字は金物屋 名前は親の手抜きの金蔵
店の名前 これも手抜きの金ちゃんうどん
夫婦で軽トラのうど ....
雑木林の木々に囲まれた湿った寂しい道を登ると
不意に緑の沼に射すくめられる。
ホテイアオイがゆっくりと揺れ ボーボーとウシガエルが鳴いていた。
あの年 この沼にまるまる肥った川エビがわいた。
 ....
サンタクロースのような大きな袋を自転車の左右に後ろに
三つもくくりつけて
左右にゆれながら
カンひろいの自転車がころんだ
大きな音を立てた
みんなが見ていた
陸橋の上から詩の合評会の帰り  ....
さかなの匂うまちから
黒い袋を抱えて
私は電車の席に座っている
黒い袋をおさえて
乗客の視線が私の膝の上に集まっている
おさえても おさえても 黒い袋が動くのだ
死にたくはないと跳ねるのだ ....
フィリッピン セブ島のストリートチルドレンはゴミ山をあさっている
他人事だと思うな
五十年前 私もあさったことがある
小学校から「つづり方教室」と言う映画を観に行った
子供は蹄鉄型の磁石にタコ ....
      傷跡               
一八才の少女は右手にカッターを握り、タイルに座り込んでいた。湯気が立ちのぼり、蛇口から湯の落ちる音がうるさかった

四年生の時、体育の授業で一輪車 ....
                 
ぼくは大切に飼っていたのである
泥川からザリガニを取ってきて 喰わせた
嘴の一突きで赤い頭を割り ピーコは喰った

切り株のうえに 
おとうさんは羽を押 ....
人間は同じことをしてきた
ホロコースト ボスニア アルメニア ポルポト ルワンダ パレスチナ
人間は同じことをする
同じことをしてきたから
同じことをされる前に
同じことをしろと 同じことを ....
タンス                  太宰を愛読した母に
               
私は息を殺して そっと 新しいタンスに耳を当てている
朝から、母がタンスから出てこないのだ
怒りの ....
      肉腫

ウクライナで民間機が撃墜された日
駅前のロータリー 車のうえから叫ぶモノがいた
シナ人を追い出せ 朝鮮人を追い出せ 叩き出せ 殺せ

安田講堂に全共闘の旗がひるがえり  ....
     さくら
ガラスの向こう そのむこう 窓ガラスのむこうに
水銀灯に照らされ さくらの花が満開でした
風が吹いたのか
さらさら さらさらと 寂しく花びらが舞っています

レモンの匂う ....
小学1年の時だったと思う。近所の2歳年上の女の子と喧嘩をした。理由は忘れた。すぐに忘れてしまうような些細なことだったのだろう。女の子は引っ掻くのが得意であった。わたしより体はずっと大きかった。私は相手 ....
島中 充(24)
タイトル カテゴリ Point 日付
標本になった眼球自由詩221/11/3 13:22
チューしてあげる散文(批評 ...1*15/10/27 11:45
悲鳴散文(批評 ...115/10/12 20:18
公務員に成れなかったコックローチ 散文(批評 ...3*15/10/9 22:20
蓑虫散文(批評 ...1*15/5/26 18:54
黒い袋自由詩5*15/5/26 15:30
からす自由詩1*15/4/30 1:38
木刀自由詩315/4/19 10:00
ゴキブリ自由詩6*15/3/25 20:21
自由詩7*14/11/24 23:54
白鱗散文(批評 ...4*14/11/21 0:01
詩花自由詩6*14/11/13 23:21
カッコーの家自由詩214/11/11 23:52
自由詩4*14/11/3 13:11
香港で若者が問う日に自由詩3*14/10/30 0:34
かぶと自由詩6*14/10/23 13:05
やけくそ自由詩4*14/10/11 0:27
傷跡散文(批評 ...314/9/30 10:39
ピーコ自由詩5*14/9/26 22:44
浄化自由詩114/9/17 14:55
タンス自由詩714/9/12 20:11
肉腫自由詩314/9/10 7:38
さくら自由詩714/9/9 14:34
狂犬自由詩112/10/18 23:48

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