犬だろうが
猫だろうが
ねずみだろうが
ゲジゲジだろうが
みんな
いっしょくたんにして
生き物よ。
人間に構わず生きよ。

ここにすでに死んでいるものがいる。
人間のわたし。

 ....
天を仰いでなんど君の名を呼んだことか
だが、君の麗峰まで声は届かない
君は雲に隠れて、姿を見せない

君は、雲を従え、引きこもる
湖畔で、日が暮れるまでひとり君を待っていた

夜が来た
 ....
一晩中、激しい雨が降った。
雨は真っ暗な夜に
孤独な白い家の屋根をたたき続けた。
妹のミリアムは雨の子、言葉を失った子。
なにがそんなに悲しいのと聞いても
なにも答えない
理由がわからず泣 ....
春の日は、光のさざ波をうち、
夏の日は、黒いみどりとなってよどんだ。
秋の日は、木枯らしと荒れた波が流れを遡った。

冬の晴れた日は、凍る清み渡った水面に銀河を描く。
冬の雨の日は、河も空も ....
君はどこを見ているの?
何を待っているの?
僕には見えない
荒地の彼方にあるものが
霧の彼方にあるものが

そこは君が生まれたところ?
お母さんと別れたところ?

君は仲間とはぐれた ....
河の流れには魔物が住んでいる。
黙っていても
向こうのほうから
おまえと話すことはない
おまえと話すことはない
と言っては、逆流して近づいてくる。

話すことがないなら
話すことはない ....
私がなくなると、私の中の水面は消えてなくなる。
私がなくなっても、流れる河の水面は存在する。
私でなくてもいい。
誰でもいい。
この地球に沈黙の春が訪れ、
誰もいなくなっても、
河は流れ、 ....
水没した廃墟が見える
かつてここは津波にのまれた
多くの人が流され
水に沈んだ

月日が流れた
記憶も流され
悲しみも流された
人々は日々の生業に忙しく
街は活気に溢れている

 ....
私の心臓に突き刺さった一本の棘。
抜くことはできないのか

河は輝いているが、私は輝きをなくし
生気が吸い取られていく
私の中の水面はどぶねずみ色になり、
なくなった。私も私でなくなった。 ....
目を醒ますと
わたしは絶海の孤島に流れついていた
濡れた衣服を乾かすため
焚き火をしようと
木を集め
薪を割った

スコーンと
こだまが返ってきた
最後の一斧を振るった
誤ってスコ ....
秋の落日が傾き、
銀杏の木影が長くなるとき
かあさんを追って
銀色に輝く
DNAの
螺旋階段を
駈け登る

ぼくの上の階段を
かあさんが登る
その上の階段を
おばあさんが登る
 ....
わたしは無地の紙に
筆で大きく「神」と書いた
何もなかったまっ白な四角のまん中に
ほら、神様が浮かび上がった

神様、お願い。
何もしないでこのまま
消えずにいてください。
無常の大河を上ろう
わたしは水面で止って
大河の流れのほうが下りているかのように
ゆっくりと黄金の大河を上っていく
わたしはわたしの源流をさかのぼり
秘蔵の宝を探し当て
きっと歓喜にひたる ....
どんな窓にこんな猫がいるのだろう
忘れもしない通った白い家の窓辺で
まどろむ幸せが充ち満ちて
目を覚まさないようにと
やさしく襟元に、毛布を寄せてくれる手は
だれのものなのだろう

いつ ....
働き蟻は
来る日も来る日も
自分の躰より大きい
荷物を運んでいる

汗も流さず
陽照り返す地面を這い
黙々と働いている

一匹の蟻が仲間を離れ
甘い蜜を求めて
迷っている
ここ ....
俺は真夏の太陽に打って出た
ホームランバッター。
必ず一球目で決めると予告して
素振りをはじめた

真夏の太陽は
額にぎりぎり照りつけ
気を失わせるどころか
俺を強くする

100 ....
わたしは遠く故郷に忘れてきた
美しい風景を見ようとしたが
目の前に大きな黒い岩が立ちはだかって
見渡すことができない

岩の上によじ登って
遠くを見ようとしたら
岩が動き始めた

大 ....
高山の峰に
一輪のスミレが咲いていた
そのスミレはピアノの音を奏でた
薄い空気に澄み渡る音

スミレのレの音を聞きたい
スミレのレの音は
誰にも出せない音
スミレのレ音を聞くと
私は ....
トドが河で泳いでいた
重い体を持ち上げながら、岸に上がった
首をあげて
天を仰いで
泣いている
トドは鹿の足を失った
トドは鹿の首を失った
トドは鹿の角を失った
トドは鹿の肢体を失い
 ....
休日で賑わう雑踏を彷徨していると
あいつは俺の心臓を奪って
逃走した
俺は追いかけた

だが
心臓のないわたしは
三歩と進めず倒れた
散歩の人に
追いかけてくれと
頼んだが
心臓 ....
刑期を終えて
わたしは芽を吹き返した
太古のシダ生い茂る
たくさんの母の菌糸から
ひとつの胞子として
生き返った

午睡を終えたら
旅立たなければならない
兄弟姉妹と
浮き世の別れ ....
近くの公園には
だれも見たことがない
泉があるという

のどの渇きを
感じる時計の針が
私を指し、
内臓がバラ色に変わると
わたしは
その泉を探しにでかけた

のどを潤したい
 ....
夜が明けて
いつもの日々が戻ってきた
飾る言葉は何も見つからないが
飾らないまま
朝のやわらかな光の中で
こうして
過ごしていたい
自分の呼吸を友とする者には
太陽はまぶしすぎる
何 ....
社長はおれを鼻で使う
今日は何の食べ物を入れるのか
おれは口をあんぐりあけているだけ
スープを入れられても、じぶんは飲めない
社長がうまそうにすするのを聞いているだけ
おれは社長が食うのを見 ....
切り立った崖の上で咲いている
スミレのために
俺は立ち上がった

国境で銃を構えて365日
誰も来ない
守るべきものは何一つなく
攻撃することばかり
はらわたの命令にしたがって
海だ ....
人は白をみていて、白をみていない
青をみている
消えた悲しみの青を

人は白をみていて、白をみていない
赤をみている
亡くした赤子の熱病の赤を

人は白をみていて、白をみていない
緑 ....
私は夢の裏側にいる
私には夢が見えない
夢も私が見えない

いま
夢はあなたを見ている
夢が見ているのはあなただけ

夢は朽ちて落ちるひとひらの葉を拾う
夢がなければ、朽ちて、落ちて ....
未来は、けぶる朝霧の中から、わたしを迎えにきた。草木眠る大地をならして、止まった。吐いた蒸気は霧の中に消えて行く。ドアが開くが、降りる客はいない。この機関車は乗る客しかいない。

私は未来に乗る。 ....
灘 修二(28)
タイトル カテゴリ Point 日付
わたし舟自由詩212/9/14 9:34
君を待ち続けて自由詩4*12/8/22 12:14
雨上がりに自由詩3*12/8/21 17:31
河の記憶自由詩3*12/8/15 23:18
一角獣自由詩1*12/8/15 10:38
魔の河自由詩3*12/8/10 23:40
水面自由詩2*12/8/10 2:33
忘却の河自由詩1*12/8/8 22:55
憂い自由詩3*12/8/7 19:05
再生自由詩2*12/8/5 6:27
一家断絶自由詩0*12/8/1 21:42
ねがいごと自由詩012/7/31 21:50
希望の星屑自由詩5*12/7/31 8:54
花嫁自由詩7*12/7/30 15:59
存在か無か自由詩1*12/7/30 0:01
逆境に強くあれ自由詩1*12/7/28 23:40
生きる自由詩3*12/7/28 0:53
スミレのレ自由詩2*12/7/26 23:25
悲しいトド自由詩1*12/7/25 23:48
急襲と吸収自由詩0*12/7/25 0:07
落ちない胞子自由詩1+*12/7/24 0:48
誰も見たこともない泉の物語自由詩3*12/7/23 2:03
生き残されて自由詩3*12/7/22 8:45
どんぶりバイオレンス(DV)自由詩1*12/3/16 19:04
牢獄の中の自由自由詩2*12/3/13 10:30
白という色について自由詩3*12/3/12 20:06
復興自由詩2*12/3/11 16:34
未来に乗って自由詩3*12/3/8 23:03

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