星空が高く
 何処までも高く開ける時
 朝になると、谷地田は靄に埋まり
 私は小さな海獣になる

 息を止めて、靄の中を泳ぎ渡り
 畦道に惑う農夫の傍らをすり抜け
 草蔭に潜む雉の飢え ....
 僕は知っている

 満月の夜
 梟の声響く夜半過ぎに
 一の社の榧の古木は
 封じられた記憶、取り戻し

 社裏の小さな瀬に
 小さく泡立つ冷たい流れに
 月の光は毀れ落ちては千々 ....
木枯らしが過ぎ去った朝
世界は光の果てから溢れ出し
零れ落ちた目醒めの鼓動が
堅く凍てついた希望の律動が
キリキリと
キリキリと
空一杯に翼を広げる

僕は大空に
澄み切った銀の瞳を ....
ざわざわと
木洩れ日が落ちて来る

背に伸びゆく翼の
幾千もの小羽の
目覚めの呟きのように

ざわざわと
木洩れ日は落ちて来る

震える睫に
ひととき留まる涙に溢れる
夢の欠片 ....
 最期の夜、廃墟は夜空に繋がっている
 かつては森であった荒野を貫く
 高架の瓦礫の向こうへ
 私は痩せた狼のように背筋を伸ばし
 吼える
 石が落ちてくるように

 やがて踞る朝が
 ....
    (展かれた瞬間(とき)に)

 シャラノ木の真白い蕾に
 小さな夢を封じ込めたまま
 ふっくりとふくらんでゆく初夏の夕べに

 初めて水の入った田に
 蛙たちが恋の予感に震え
 ....
 雨の日には川辺に佇んで
 君はいつも微笑んでいた

 横顔に纏わりつく細い髪の先へ
 指を伸ばせば大気は凝って
 堅く透き通っていく指先
 眸の奥へと逃げる想い

 澄んだ硝子玉のよ ....
 堤を越えてひたひたと
 毀れ出る
 雪融けの水のように
 当て所なく膨れ
 拡散していく
 春空

 打ち仰げば
 溢れ落ちる光の
 飛び散る飛沫の
 血潮に濡れた
 はるけき ....
 夕暮れのとあるひとときに
 猥雑な風ふと浄化され
 街ゆけば影は晴朗に澄みわたり
 君の頬に紅の西陽染まりゆく

 かつて君は語った
 玲瓏な風佇む宵のこと
 清澄な空薄く張りつめて
 ....
 花びらが水面に触れる
 空が弾ける

 幾つもの水溜まりに
 浮かぶ幾つもの空
 統べる魔女のように
 君は花びらを散らし、空を舞う
 
 沈めた花の小箱に
 秘められた悔恨の鍵を ....
 ある朝、私(わたくし)は
 暗く濡れたアスファルトの坂道を
 一人ゆっくりとのぼっていました

 両側にはブロック塀
 その向こうには常盤木の枝密やかに揺れて
 飛び立つ朝の姿が
 澄 ....
5月の朝
空に光は形を成し
僕は空を歩く

足跡は新緑の木々に
萌え初めた木の葉に
閉ざされた瞼のような、そのそよぎに

色を変え、心を留め
未来を孕まず
輝く朝の
今を握りしめ ....
夜雨(12)
タイトル カテゴリ Point 日付
光の海へ自由詩116/8/2 10:47
闇を背負う人自由詩216/3/26 20:14
永遠に自由詩016/3/16 19:42
木洩れ日自由詩212/1/18 5:06
石が落ちてくるように自由詩211/10/2 12:13
宇宙(そら)へ自由詩011/9/21 9:13
雨の日には自由詩211/8/7 17:07
春空自由詩311/7/22 4:54
夕暮れに自由詩211/7/4 20:25
花びら自由詩111/6/18 5:15
宣告自由詩411/6/9 18:27
僕は空を歩く自由詩611/6/3 9:16

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