ある日、暗がりで泣いていた

曇りガラスで
隔てられた向こう側
訂正を繰り返したが
少し強く
抱かれただけ
浴槽は少しせまく
触れたそばから、失っていく
外から
配達人の声がするが ....
ふと顔を上げ
車窓から外を覗くと
無数の屋根が並び
その暴力的な密度に
くるしい
と思わず呟いたあと、
顔なんて上げなければよかった
次の駅
降りて、溶ける身体を去り
改札を出る
あなたの言葉は
表面を滑りながら
いつも
知らない
誰かのために放たれていた
たどたどしく、伝えても
遮ぎられて
あなたには届かない
雨粒に穿たれる石のように
心はなめらかに
すり ....
親戚の目が横に伸びていく
奇妙な形、と思いながら
引かれた椅子に座る
袈裟がうやうやしく現れるまで
空気は露ほども動かなかった

左手に花を、右手に線香を持つ
あとは付いていくだけ
人 ....
知らない道を歩いていた
傍には紫色が浮かんで、流れて
花には見えず
人間にも見えない
夢の残滓、と認めて
あとで整理するために
香りだけ持ち帰る
知らない惑星が
いつの間に

背 ....
最期は他人の手が
あなたを最も丁寧に整えてくれた

半開きの口の中は
いつか見た洞(うろ)のよう
きっと
永い時間に繋がっている

(あなたとわたしを分かつものが
(部屋に満ちて苦し ....
黒い空から夏の問いが、
身体に差し込まれて
意思の間隙で
するどいものが窺っている
虫の音を風が運んだ夜に
生きるものはみな静かに重なり
目を瞑っても怖くはない

視線を置きわすれては ....
輪郭だけがある、かたまりには、
模様のようなものが、
刻まれていて、もうずっと動かない
胸の奥
いつここに来たのか

それは
外界の音に共鳴するようなところがあり、
愛おしくも無いけど ....
森が鳴っている
人には聞こえない音が、聴覚を
拒んで
分断されることもない
価値のある
地図上の広がりとして
さらけだされた命を包んでいる

照らされなければ何も無いと
錯誤する
 ....
彼が初めて発した言葉から、醜いののしり合いが始まる
彼が初めて刃物を持った朝、私の人生は緩やかに終わっていく
未来の子供には言葉の正しい効用と、性交の正しい効果を
教えてあげなければいけない
 ....
二人の間にはビールがあり、冷めたピザが二枚並んでいる。
上気した顔が二つあり、お互いの口が、訳の分からない音を鳴らしている。
反対側の席には煙草の吸殻がうず高く積まれ、(女)が汚い話をしている。
 ....
〈私は〉
なだらかな丘陵であると認識した
柔肌の質感であると把握した
優しさであると思った

  匂いのする粒は圧縮され浸透していき
  並べられた音叉が音もなく倒れる

〈彼は〉
 ....
正しなさい
修めなさい
誰が教えてくれたのか


一枚の紙片の前で
私は
何も知らなかったことに気付かされる
苦い沈黙を脳内で響かせる
出会った人、起こった出来事を並 ....
空間A
白い直方体
そこに100人の人がいます
男も女も、おとなもこどもも
皆、思い思いのことをしている
そして100の視線
a-a'
目から対象までの線分に色を塗ります  ....
むずかしい言葉の意味を知らなくても
人を愛することは出来るはずだった

暗闇の中で掴んだ葦は
美しさだ
やさしい歌は
祈りだ
自転、公転
引力
その正しさ
土から ....
雨が降らなければ
いつまでも踊っていられるのに
御飯は食べられなくなるかもしれないけど

時間の感覚は
生来持ち合わせていません
明日のことも
昨日のことも
よく分かりま ....
鋭利なもので
ぼんやりとしたかたまりに
切りこみを入れていく
あとは
一かけの勇気のようなもの

角度/向き/時間/場所/そして可能性の萌芽/
解体できる/新しい意味が生まれ ....
その日から
月は満ち欠けを繰り返し
掃っても掃っても降り注ぐ
火の粉のごとく
繰り返しを強いてくるようになった
廻ること
廻すこと
(それは自然
(それは了解されている ....
彫像のように
毛羽立つ猫が
呼吸をする

冷たい膣のなかで
八度の熱が
震える

誘われた虫たちに
私たちがしてあげられることを
数える


そして幼い記憶 ....
人差し指と親指を差し出し
ひかりの直径にあわせる
片目をつむる
得意気な顔をして
(ほら、こんなに、小さい
(こんな狭いところで、うさぎは、ね

その指を
手を
腕を
体を
生ん ....
漫然とした教室の中
五感が鈍くなった私に
ただ一人だけ
語りかけてくれるものがいる
親指のささくれ
はみだした部分を
引きちぎる
滲む
赤く
私の証明
そっと押さえる
指に転写さ ....
七色の水が流れる川
架かる橋を渡ると
煙が立ち込めていて
しばらく歩くと
世界が暗転した

         (どこにもない
          たった一つのものを
   ....
           水辺で老人が少年と釣りをしている、のは創造ではない。記憶である。誰の頭も、何も作れない。・・・・隣人のしたり顔を見ていると、腹立たしい。お前の頭の中には何もないよ、からっぽだよ、 .... 誰のための言葉かは
ずっと前から分かっている
口が、いつの間にか
真っ白な糸で縫われ
まるで自分のものではないようで

可愛い動物たちが
牙をむくのが怖い
客は
お金を払わないことで ....
ガラガラとドミノのように自転車が倒れゆく音立ちすくむ人

轟音の地下鉄の中 両の手を用い会話をする唖の人ら

雑踏に自分を見失いそうになる私には自分が無いのか

十二時にALTAの前 ....
闇を射る月の光のさやけさに このしんとした しんとした夜よ

夜半過ぎ吾の思いが闇を駆く 君に伝わるはずもないけど

取りとめの無い事ばかり考える大事な事は忘れたふりで

生ぬる ....

通学途中の自転車の上
猫がくるんと丸くなって
寝ているのが見える
猫の背中に
朝日が柔らかに射す


夜の匂いが満ちてくる
まだ猫が眠っている
側に置かれた ....
周り皆自分の敵に見えるけど未来の友となるやもしれず


ここ調度この前やったと分かるのに思い出せない悲しき空欄


「全力は尽くしたはず」と言い聞かすそれでも不安は私を巣くう

 ....
「いいこと教えてあげようか」
と、お姉ちゃんが笑う
夕暮れ時の部屋は
鮮やかなオレンジ色に染まり

「消しゴムに好きな人の名前を書いてね」
「それでその消しゴムを使い切ると」
 ....
小さな男の子が机に向かって、何か、書いている。詩を書いている。稚拙だが、情感にあふれた、愛おしい言葉が、黒鉛を犠牲にして、生まれていく。時おりぼんやりと何かにふけっている男の子の姿は、秩序立った世界と ....
いっと(38)
タイトル カテゴリ Point 日付
還るとき自由詩121/9/2 0:12
ある日自由詩019/12/22 17:47
家族自由詩119/2/2 17:43
自由詩518/11/7 0:04
徒花自由詩418/9/12 22:33
終末の時自由詩318/7/1 23:13
ある個体自由詩117/9/7 21:18
物性自由詩117/3/21 23:10
森のこと自由詩016/7/21 23:12
未来自由詩113/11/4 1:49
自由詩013/5/15 20:32
三人自由詩412/10/10 20:48
修身自由詩012/1/12 0:23
空想空間自由詩111/10/8 1:09
やさしい自由詩111/9/16 23:25
自由詩111/8/18 0:25
綴る、ための自由詩011/7/8 23:52
経験自由詩011/4/3 17:34
いのち自由詩010/10/31 22:17
衛星。あるいは四分の一。自由詩110/10/25 9:39
過日の血自由詩310/5/1 20:13
別れ自由詩110/3/9 10:23
生まれる場所自由詩110/3/9 0:24
祈りに自由詩109/12/20 16:35
新宿短歌109/9/29 21:51
夜よ短歌009/9/11 23:28
猫のいる自由詩009/8/23 0:16
入試篇短歌009/7/21 0:09
消しゴムららら自由詩109/6/12 9:42
立ち上がる時自由詩009/5/12 22:47

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