送り盆ではこうするのだと
山のような握り飯を作っている父は
背中だけ見れば
往時のままだった

送り火の陰に
茄子の牛
誰かの出て行った気配とともに
盆はつつがなく終わる

ごま塩 ....
少し上機嫌で宵を迎えると
黙ってふところをまさぐられ
虹のかけらを一つ
出し忘れていたのを思い出す

そいつは日没の時刻も守らずきらんきらんと光っているが
宵がつまんだらくすんで汚れて消え ....
たいようの直下で
あおあおとした稲妻を注ぐ空を見た
母が困り顔のまま少し笑う
午後二時の積乱雲

影が濃度を増して
昼間の星が透けて見える
どこへも行かれなかった星座の線のような
稲妻 ....
/ローレライ

海に沈む夢を繰り返し見る。
何もない場所で
干したままの上着と同じように揺らめきながら
人魚が遠くで歌っている。

(ここは静か、とむらいの火はとおく)

海は決まっ ....
錆の浮いたガス栓を少し捻ったのは
標本が見ていた
リノリウムの床を上履きで踏みつける
よそよそしい靴音

思い出の中にある理科室では
夕方がひどく長引いていて
折れてしまうんじゃないかと ....
春過ぎて何も知らない通学路柳の下に制服の待つ

まぼろしの夕立にまた軒を借り二本の傘を携えて待つ

図書館の掲示と地方紙の弔事また絨毯の赤は褪せきる

雪に黙りマッチで煙草に火をつけてマフ ....
よそよそしい木の
うえに獣がいる
ななつまで数え
るあいだにふりつづく雪
は遠くへゆこうと
したはず

たとえ刃が
刺さったとしてもそのまま
にしておけば血などでない
巣にかけられ ....
路地は暗くなることはないが
電線に
からすの姿はない
石畳を虫が
あくまでも余所者として駆ける

ねじを巻くように
大挙して風が吹くが
無音のまま

中空はモノクロームに染
色さ ....
 日常を打破すべし
化粧品の広告がさけぶ
職場までの16分間を、
毎日同じ車両と場所で
わたしは、雨の気配を
見なかったことにする

 日常を打破すべし
ここは戦場ではないが
戦いは ....
夜が来る前に
明日がはじまって
あわただしい町に
「いつかの未来の幸せを
おひとついかが?」と
販売車

昨日の味がするミント
これからのバニラと
はるか遠くのチョコレート
どれも ....
青空に向かってたくさん生え
風に合わせてなびく手と手と手と

見知らぬ獣が指をついばみ
その指を減らす手と手と
草原に
太陽が一つ増え二つ増え
枯れる手と手と、また武器を持たぬ手と手と手 ....
無人駅でタップ
雨はまだ
上がったばかりだから
外灯の下に虫はいない

(電車とホームとの間に
広く隙間が空いている
ところがございますお
降りになる際は足元に
お気をつけください) ....
支流を11月が
まだらに照らしている
かたどられた舟は
庭を抜け小さな平原へ

ステレオタイプに舞う
落ち葉の色を覚えながら
粒ぞろいの胡桃に
追い越されること二度

降り立つとこ ....
錆びたバラ線のにおいは血液のそれだった。
立ち入ることのできない場所に立ち、触れれば噛みつくと、獣のように意思表示している。

(天気予報が雨を告げた時刻だ。まだ夕方というにも早いが、厚く曇り明 ....
かたむいた町で
雨が上がった
置いたままにした眼鏡は
片方曇っている

路地は揺れている
西日が真っすぐ射して
どの鳥も
からすに見える

門柱には
チョークで落書きがしてある
 ....
三月にリセットかけて天気予報シーズン最後の雪が降ります

電車内つよく窓を打ち時折光る座席のひとよ気づけ第一話に

ずぶ濡れで風邪をひかない春が来て着のみ着のまま傘も差さずに

水たまり段 ....
階段は夜よりも昼のほうが暗かった、上下左
右に伸びた立体駐車場が、がりがりと音を立
て始めている、埃のかたちをした日差しは鉄
柵で刻まれて、誰もが忍者かシマウマのよう
なシルエットになっていた ....
大きな鳥の声がうるさい
顔を向けても曇り空しか見えずに
また声がして雲が増える
辺りが暗いから誰も上を向かない

ディスプレイに珍しい生き物の写真
赤黄色、そして青、

寒いときは
 ....
木立から湧き出る鳥たちを
眺めていた暖かい日差しを何度も
さえぎる影に飽きなかった三月の日は
あまり長くない

雨にかかる虹
のように見えるファントムでなくなった春が
そこまで来ている舌 ....
たとえば、亡骸を誇らしげに焼き払うような
上手ではない水切りの音
整備された河川敷と、焚き火の跡が
ただそれが魚たちであっても

火葬場が、通学路沿いにあって
人を焼いているときはグレープ ....
逃げ出した谷底
には肌寒さがひしめいている
じれったい速度で燃える
一斗缶の中で時折弾ける火
の勢いで灰が舞う

いつかの完璧に高い空では
太陽がトンネルの奥を
照らし出す
ヘッドラ ....
きた側へ去ってゆく季節によって
咀嚼される草むら
の あちこちが光っていた

きょうだいは 決まって
言いつたえられた子供の姿をしていて
目が合えば表情だけでわらう

語るべき ことが ....
(となりのとなりの家に住んでいるきれいな
お姉さんは、ぼくのことをさんざん好いてく
            れました/けど)

ニュースは電車沿線での火災を報じていた。死者は一名。全焼した民家 ....


6キロ先に 機影がみえます
 所属不明機 おーとーせよ
とどきますか 信号 にほんご
くりかえす
 所属不明機 おーとーせよ
にほんご

現代

古代の 断絶

影  ....
二本目に火をつけても咽せなくなった。
屋上は広い部屋に過ぎず、
大きく見える飛行機も壁紙のようなものだ。
カッターシャツが二枚、
影を落としている。

(羽虫がまったく入ってこない。
四 ....
ずっと
背伸びをしていよう
10センチだけ高くなる
視界に
感慨があるうちはそうして

ただ一列に並べられた
交差点は
信号機は
佇んだ
その左折標識を

そこは明るい
そこ ....
北東の風が、強い。
雲は千切れ、崩れていく。
思ったより遠く、ずっと遠くまで、
走っていた。

(誰もいないグラウンドに立ち、空の箱を投げる。誰もいない。投げられた衝撃で箱が開
き、そこか ....
少しだけ
よごれている床の
リノリューム
ひとこえ鳴いていました
げろり、と

走っています
けんめいに
硬いものが崩れるときの
ふるえが
伝わってきます

見上げるそらがない ....
あさがきつづけている
まどのうちがわにひびきだす
こなたかなたのかげほうし

まったきへいげんに
たつものなどない
よこたわるかぞえうたのこえは
おびえるでもわらうでもなく

ゆうぎ ....
定刻より早く到着いたしましたので
当駅で十分ほど
時間調整をいたします と
車掌は言った
ドアは開け放され
流れ出てゆく九月と
老婆のふかした煙草のけむり

列車と町を
隔てているさ ....
月見里司(45)
タイトル カテゴリ Point 日付
帰省#3(即興)自由詩212/6/14 0:05
朝の遠い夜を(髪留め一つ分の輝きのための)自由詩012/6/8 2:21
すいか(習作)自由詩312/5/15 0:47
ブルーアウト自由詩312/2/1 8:22
カーテン自由詩011/8/4 16:48
まちびと短歌111/8/1 18:45
ブラウンフィンガー自由詩011/1/18 0:30
ぜんまいの炎自由詩211/1/16 2:51
空席のためのルーチンワーク自由詩110/4/30 19:57
ハッピーエンドアイスクリーム自由詩3*10/3/15 21:35
手と手と手と自由詩010/1/31 7:16
幕間のトリック自由詩109/8/31 16:30
フラワー・ストーム自由詩008/12/10 13:33
瞳孔自由詩108/9/7 21:02
だいだいの中を自由詩308/7/19 11:40
【短歌祭参加作品】あめふりのひに短歌208/3/19 13:56
十二月の階段自由詩508/3/17 22:11
キロトンまたはメガジュール(ショートムービー)自由詩208/3/13 22:49
果物自由詩0+08/2/12 11:47
野辺送りのストーン自由詩308/2/3 11:52
低い太陽(重機人間ユンボルより)自由詩008/1/24 12:08
(かたぶき)自由詩007/12/26 23:41
火のついた家の中で(習作)自由詩2*07/12/11 9:55
、雲海(計器越しに)自由詩107/12/9 23:41
遠景[group]自由詩307/11/12 22:55
ここから先は自由詩107/11/11 1:08
中空自由詩307/10/12 22:11
コンクリートがとおい夜自由詩007/9/25 2:26
音叉自由詩507/9/22 1:55
並列自由詩207/9/19 23:38

Home 次へ
1 2 
0.11sec.