おしゃれなRockが
  煙るような音量で充満する
  ビジネス・ホテル 3104号室
  いやな感じだ


  青白い天気図の影を
  カーテンが弾いている
  さっきか ....
  なまこの指に溜まっていく
  季節はうつくしい
  ゴム長靴が 二、三組
  傘もささずに駆け去っていく
  この場所が 貴方の 唇であったなら
  忘れたものだけ
  見ることができた


  床に張った
  埃 夕日の格子型
  蛇口に残る 唇のような水
  言うことができた
  言い尽くしたことだけを


  ....
  約束の時間にすこし遅れて
  寂しさの続きのような場面が始まる
  駅舎の街灯に羽虫が 丸く 集る


  高架下 ラーメン屋に入る
  やがて感情は数枚の貨幣に似てくる
  ....
  日の光の血痕
  かさなった眼が ここにない
  熱い空 道すじをかすれて
  私たちの歌は時間の
  壁の裏におちた
  梱を解く
  潮風に鳴る 缶ごみ
  いろどる 比喩たちの面皰

  梱を解く
  あなたの二枚の手を思う
  ひらたく延ばした糊状の意味

  荷はひろげられたまま
  ....
  または
  栞をはさんで
  席をたったはずだ
  ただ いつものように

  つめたいお茶を飲んで
  ポテチをこぼして
  指を舐めていた
  または

  たのし ....
  川を越えて
  戻ってこなかった
  砂利になった言葉ならば
  ひとつかみにして 気のすむまで
  玩んでいられるのだが


  駅の屋根に
  ふる雪のかなしさ 静かさ ....
  通り過ぎて
  あなたの胸に
  影になってから
  はじめて言葉がきらめいた
  海老蔓の秋 はじめから 記憶の形をして
  読みさしの本に
  めがねを置いて

  電気をけして寝る
  かぜのたたく
  春のよる

  飼っていた 小さい いぬ
  ゆめのなかで やわらかく
  きみの手にだかれ ....
  かの女は亡くなった
  たとえばの話 飴玉を 歯でくだいた

  あらい生地の 喪に服して
  いななこうとする肌の
  ごく健康な寒気

  葉かげでつぎつぎ破擦する 秋の ....
  火葬場で
  親しかったものの焼失を
  ただ待つことの夏に似ている
  そのイーゼルは ほどなく
  別の出来事に似ていく

  喚ばれて
  追憶をなめらかな塊のように撫 ....
  蒲団のうえ 擲たれた
  かたちのパジャマ
  空腹が現在形のように
  堰きとめられてある
  くらやみの土管
  笑んでいた
  旋律のような歯
  高層ビルが 欠けた明かりたちを
  組みあげていく わたしの書く風景
  潮錆びた 港湾都市の
  あらい浪が
  きみの肌のどこかで
  弔われている 私たちは
  擁きあえる 芒の原にこぼれる
  月影に這わせた 指のふしの奥で
  あいた土地に
  油圧ショベルが項垂れている
  だから、土地っていう感じがする
  鉤括弧からこぼれた
  月明かりが幼児にでも変わるだろう
 言語により横たえられた朝なので
 わたしはどのような経路をたどって
 虚しさに到達すべきなのかわからない

 曇っているなにかが曇っている
 カラスが低いところを飛んで
 ごみ袋 ....
 掠れた日差しに 傘をすぼめて
 貴女の唇にすわりたい
 悲しく 梅の花が路を塗る
 あさの雨の うその雨の
 やがて間遠な 瞼
 窓際にいて
 日差しが区切れていく
 とどめられた 文章
 なにか 約束のようなものを
 忘れるときのにおいが この世界
 網膜の裏の貝殻
 打ち寄せるパロールの波面にぬれ……
 一つずつ 拾いながら 麦藁帽の
 汗ばんだ夏の紐を結いなおす
 顔だ それは 男たちの
  みぞれ雪が 都市に注いで
  ごくすみやかに歌となる
  その疾さで のどがかわいていく
  煙草を 二口 吸う
  毛皮のコートを着て出かける
 みずからというものの
 庭先に 縁台をひっぱりだしてきて
 そんなふうな具合に 眠ることができた
 一匹の猫が日なたの埃のなかをこちらに向かってくる
 あなたを愛することができた よ ....
  肩甲骨
  と彼は呟いたが
  そこから話はどこへも進まず
  木管の音が間抜けに溢れる
  さっき沸かした湯が
  冷めていく
  嗚呼、
  髭。
  なでられ なめられ
  めでられ めくられて
  いるときに また
  硬く 近く 拒むのだった
  キッチンで
  蛇口で
  ぼくじしんのようなあらわれと
  いっぽんの ....
  商店街の切れこみを
  うごく
  標識を呑みこみ、
  標識に呑みこまれていく
  警告する権威が さっきまで
  目の端に有ったことも
  呑みこみ、呑みこまれて
  ジ ....
  目の淵に
  暗やみの流砂が
  付着してい、あおいのか
  しろいのか 不確か

  数値のかたちを
  一息に呑みこんで
  膝のあたりに 浮きたつ
  いいかげんな  ....
  ねこが
  しみこんでいる路地
  空がきれいだ
  電線が微かにたわんで
  ビルのむこうまでみえる
  わたしたちが死んでいくのがみえる
  くろい函に
  颱風がつまっている
  ガラス製の 記憶より小さな、
  そのよるがふるえるのをわかると
  これは宝ものなのかもしれないとおもう
  血液の、くろい川の
   ....
  捜すこと
  幻視すること
  かんがえることが
  小虫の群れになり壁を走る
  たんに叫びだった声に甦れよ、
  すべてのおちぶれた動詞たちよ
  学生寮のそばに
  ワゴンRが停めてあって
  夜 街灯のしたで光っている
  そう 言う
  架空の口蓋や歯茎などで

  蕎麦を手繰りながら
  昔おそわった担任の口癖を ....
草野春心(1124)
タイトル カテゴリ Point 日付
文書グループ
都市風景文書グループ24/3/23
太陽文書グループ24/3/23
短詩集文書グループ24/3/23
春心恋歌文書グループ23/11/6
コラージュ×4!文書グループ14/4/3
詩の磁場文書グループ12/7/21
投稿作品
現代的な死自由詩3*23/12/28 22:55
なまこ自由詩423/12/28 22:48
果物籠自由詩1123/11/14 18:18
羽虫自由詩623/11/6 22:51
lensflare[group]自由詩823/10/30 21:44
梱を解く自由詩323/10/23 22:59
または自由詩323/10/16 22:34
歳月自由詩923/10/9 22:14
海老蔓[group]自由詩10*23/10/1 13:01
託す自由詩323/5/24 19:46
品性の喪自由詩122/10/16 14:49
火葬場[group]自由詩322/10/10 10:42
パジャマ自由詩622/10/2 10:45
風景自由詩222/9/24 16:34
肌 芒の原自由詩422/8/14 21:36
整地[group]自由詩422/8/11 11:02
到達自由詩022/7/8 23:11
唇と瞼[group]自由詩422/7/2 12:18
文章自由詩422/6/25 9:08
貝殻自由詩122/6/12 0:03
みぞれ雪[group]自由詩322/6/4 14:10
存在と縁台[group]自由詩322/5/27 17:43
自由詩222/3/2 22:55
きえている自由詩222/3/2 22:52
歩行の滑稽自由詩122/3/2 22:51
目の淵自由詩322/2/23 21:02
ねこ[group]自由詩9*22/2/23 21:01
颱風自由詩822/2/15 19:06
虫、動詞たち自由詩522/2/15 19:04
言う自由詩322/2/15 19:01

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