八月に
 昭和は古びたり
  いまだ尖り
ここにひと{ルビ欠片=かけら}の記憶が落ちていた
天候にもよるが
ふいにキラキラとうつくしく光りだすから
この一片には
よほどの幸せとそれに彩られた日々があるにちがいない
と思われた ....
みつからないところで寝ています 風がどっとおろし
茶と黒のふとい縞がうねりあがる
「おーい」
影がよぶ
なんだ陽とくらがりとが罵り、奪いあう場に誰もいない
草の実は野をとび またとび つぎつぎととぶのに
純潔な実も 描い ....
夕べのそらの木の下で
かぜふくしげみにひざをかかえた
おれの顔のちいさい一人がすわっている
きまじめな面つきの
むかしのテレビドラマのような
ひどく地味なふうていで
(なあに 貧しいだけさ ....
  1 ある青年

この強力なバーナーから騰がる炎の熱を蓄えた
おおきな{ルビ布袋=ふたい}で空にのぼるのだ
「トーキョーだかニッポンだか知りませんが
ぼくには十世紀まえの遺跡です」
点在 ....
  
いま どらびだの駅だ
むかし おなじ名まえのくにを紀行したが
もうずいぶん前だったので
ぼうぼうとした
かぜの中あたりで 周囲を見まわす
駅舎があるとは知らなかった
いや
とうの ....
     ―「今日はきっとすばらしい事がある」そんな予感を抱かせる夏の朝
       ふと得たインスピレーションに古き祀誦が蘇る


ああ
しんごおせえ
なあ ら、なあ ら

おお
 ....
とても さびしい
ゆうひ の はまべ
 とて とてのむ とてのう

たのしそうに
てをつなぐ ふたり
 とて とてのむ とてのう

かぜ と ゆうひが
ふたりを てらす 
あのまち ....
…ない
…がない
意味がない

よるをゆく
鈍行の窓からみた
うずくまる家々の
ふるぼけてくらいひかりや
その灯りのもとの
貧しいご飯
ちいさくてひくいちゃぶ台
ブラウン管のテレ ....
ガラス窓の向こうで
風が吹いている
木々の梢は風になびき
空を掃いて 葉が{ルビ細々=こまごま}と翻る 
くろく空裂く鳥の群れか
とおい湖の 波間の影かの ごとく

音は聞こえない
あ ....
{ルビ風神=かざかみ}ひとり帰り{ルビ姿=かげ}
踏まれぬ路を ザザと縫う
川すジかくしタ 野ノ原 の
雷神亡いた ヵ ザザと 縫う
たちあがっ て ハ 「ぁ!」

むザ ム ひ とり
 ....
僕が転んだ
白い雲がながれていた
僕が転んだ
麦の穂を風が掃いた
僕が転んだ
膝に石を刺した
しんとした痛みを
ただこらえた

なにもいない
わらい声もない
野辺のみち
そらの ....
ふゆ
まっ白い雲のうかぶ空は
あおじろい怒りの気配
をたたえ そ

下を
煮えきらず
あるいていた
手に
侃々とたぎり
鳴る鍋は なく
白い白い
雲は浮かぶのが
「自由」と ....
あかあか てる
あかあか と てる
そら と
そらの みなかみ

かか
かか
なく かげに
そっと くび めぐらせ

おもふ

ものも けものも 
そらみあげ
みな目鼻も ....
このような気温であるのに
なぜ雲は浮かぶことができるか
冬に向かう日の まぼろし
日もかげり奔る地の遠い端では
なにか小さなものを手にいじって暮らした

四角い小さないすに据わったからだが ....
また、イスのせい
名のような
となえる声をかかえて {ルビ儘=まま}のみちゆき
昼下がりの野辺は
視界を圧するしろい雲
暑くてあつくて まだ夏のあかし

山本通は一本道
左に傾く舗装に ....
雲には雲の消長あれど
もとよりその場に出でくるものにて
専らおのれより動くことなし
ゆえにいま雲の目の前を動きゆくは雲のゆくにあらずして
空のゆくなり

{ルビ陸板=プレート}上に我らと我 ....
止んだといっても
山の上では吹雪が未練げにとぐろを巻いて
こちらを窺っている

お{ルビ日=ひい}はぼんやり鬱ぎ顔で
普段はけしておがませぬ白い体を曝したまんま

いいや
この地ではお ....
そのころ
灰色の頭部をした
理知的な蛸のやうなものが地上を統べ
うつくしい名画さながらに平原を
ナナめに逃げ惑うひとびとを捕らえては
おちこちのしかかっている 
(すぐれて理性的な蛸の あ ....
{引用=            ︱大切なものをなくした日は
             見るものすべて新しい}


いち日の折り返しを前に
いつまでも夢みたように在る
うん、そ ....
 突然だが、自分の居るのはいつも辺地だ。と、最近あらためて思った。君はどう思う。数百年の歴史を持つ、世界有数の人口稠密地に暮らす君には、ちょっと迷惑な話かな。
 各自にとっての中心は各自自身だとする ....
         ︱{ルビ淡々=あわあわ}と、それはとおく


ほうほう
紅いろ帯びた西域は灼け
あれは記憶に薄れゆく
旺盛なる高温期の名残りか
あるいはまた
時の{ルビ ....
顔に差す
まだら 漏れ日 て
{ルビ外=そむ}けなく
{ルビ声=アト} 失き まだき
悼ま ねく間の
{ルビ学校祭=まつり}おわる
木の間に 
末期の目は覗き
メールが来た
日付けはなく 差出人の名前もない
蔵書を貸してくれという

家の居間から出ようとしただけで
不意にさびしい海岸に出てしまったなら
どうする?

まあ
椅子でも出して座っ ....
夏が来て
ちいさな歩道に
気のはやい病葉が舞いだすころには
わたしはもう
いないかもしれないけれど
いまはやわらかい
光のなかを飛んでゆくわたしを見てください

(きっとあなたは
  ....
知らない町をゆく
晴天が聳え
すかんと何もかにも失せている
なるべくうまく置きざりにされて老いぼれたい

乾きたい乾きたい ああ 
かあ わ きたい の
曲がりくねった坂道むちゃくちゃに ....
             -「戦後」に


手足が期待のようなものに透け
それを静かに束ね(斜光が胸を薄くする

「きみ、腕が痩せたね
「僕、肩が落ちてね

窓の外から
母たちのお ....
ひとが生えている

近寄ると体温が匂う
生えたばかりの子株が
かわゆらしく親にしがみついている
泣き顔、笑い顔、憂う顔
みな目を閉じ
しずかに空の下にたち 並ぶ

農夫の姿は見えない ....
「ま」の字(59)
タイトル カテゴリ Point 日付
有珠SAにて俳句121/8/1 21:32
すなはま自由詩3*20/7/26 20:25
かくれが自由詩3*19/12/15 10:13
郷(さと)自由詩4*19/12/7 22:38
ちいさいひとり自由詩7*18/9/23 23:42
気球自由詩9*18/2/4 21:08
 どらびだの駅自由詩6*17/12/3 20:47
Natu、朝のModeで自由詩3*17/8/16 20:48
ゆうひの はまべ自由詩4*17/8/7 8:30
 そんな日々 自由詩017/7/23 13:03
ガラス窓の向こう自由詩2*17/6/10 20:52
(野 かぜ)自由詩4*17/1/14 18:39
僕が転んだ自由詩2*16/10/5 22:14
(なべ)自由詩3*16/8/10 23:05
(あかあか)自由詩116/4/25 0:04
今年の秋自由詩1*15/11/1 23:26
また、イスのせい自由詩2+*14/5/24 23:18
望景自由詩4*11/9/17 22:43
(この世は物質に囲まれて暮らす)自由詩1*11/2/8 22:08
自由詩210/8/8 23:03
洗濯自由詩1*10/7/21 22:16
手紙自由詩110/7/19 22:32
遠山自由詩610/7/19 22:25
(夏、とおい傷指す午前)自由詩1*10/7/18 22:53
(祭おわる)自由詩010/7/18 22:23
手紙自由詩6*08/6/28 22:17
もんしろ自由詩4*08/6/28 21:42
彷徨と空自由詩7*08/2/8 21:17
ゆうぐれ自由詩6*07/10/2 22:37
農園自由詩4*07/9/4 20:17

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