ネオンサインの海を往く
もじゃ髭の老夫
くたびれた大きな袋を引き摺るように
あの中には
子供たちの願いと、欲と
資本主義が入っている、らしい
その重みは絶えず
彼の腕を苛み
老いた腰を ....
此岸から彼岸へと
車の葬列が往き過ぎていく
勝鬨橋の寂しいど真ん中
ぬばたまの闇色鏡を
滑っていくあれは屋形船か
はたまた精霊船だろうか
城塞の如く聳えるビルの窓には
煌々と点された幸せ ....
ノートの一面に書き込まれた文字たちを
消しゴムで斜めに切り落としていく
行き先を失った半直線の切り口から
じわじわと滲み出る、意味のドリップ

味気ない線の切れ端だけが残り
毛糸玉のように ....
この世で最も不誠実な私の言葉を
不誠実な鳩どもの中でも
最も誠実な一羽を選んで託す

薄汚れた鳩よ
どうか届けておくれ

この世で二番目に不誠実なあの人の元へ
詩というものに憧れてみた
その時から
心は言葉の奴隷になった

紛い物ばかりが見えるこの眼球を
抉り出してしまいたい
記号しか聞かぬこの耳を
削ぎ落としてやりたい

そんな戯言を繰る ....
プシュッ!
プルタブを引く音が一日に楔を打つ
ネクタイを少しだけ緩めた
午後十一時
泡立つ黄金色の液体を流し込んだ
喉が苦味で灼ける
祝祭とは程遠い
労働の味

それはワインであって ....
重力に引かれて眠りに沈みゆく
数多の追憶の断片を
けたたましく喚く時計が
力任せに引き戻そうとするものだから
ほら、シナプスが千切れてしまったじゃないか

無垢な朝の光に出会うたび
鏡の ....
「私ハ正直者ダ」ト言ウ人ヲ
信ジテハイケナイヨ
真実ヲ語ル人モ
偽リヲ語ル人モ
同ジコトヲ言ウモノダカラ

「私ハ嘘ツキダ」ト言ウ人ヲ
信ジテハイケナイヨ
真実ヲ語ル人モ
偽リヲ語ル ....
鳩が、轢かれていた
先刻まで内臓であった、肉であった
暗い紅の塊を
透明な青空に晒して

恬淡として流れる時の何処か
羽ばたく命として「いた」それは
一瞬を境に
おぞましい塊としてそこ ....
生きていたいという人に
死にたい人の心が分かるものか

「いつか良いことがあるでしょう」

暢気な予言者よ
骨は軋み、心は張り裂けんばかりの明日を
迎える準備はできているのか


 ....
艶めく林檎の滑らかな膨らみに
包丁の刃を当てて一息に押し切る
迸るエチレンの醇香
生まれ立ての双子は
仄かに黄味がかった白い果肉を
更に真白な俎板の上に
投げ出していた
あられもなく
 ....
雨は止んでいた
底冷えの余韻もなく
左手にはぶらぶらと
きまり悪そうに一本の傘
軽やかに往く人々が
刹那の訝りを湛えた一瞥を
そっと私に投げかけて去る

そうか、彼らは知らぬのだ
ま ....
十一月十八日の雨の中
独りで街を歩く
私はひどく寒そうにしていた
晩秋の冷気は
誰の肌にも等しく訪れるというのに
片や暖かさは
幸せを選んで賢く舞い降りる

洒落た厚手のコート
小さ ....
語り過ぎるのだよ
いつだって

僕たちは
三万粒の種を蒔こう
言の葉を繁らせる
たった三本の木のために

三百の花を摘んで捨てよう
人の心を蕩かすような
たった三つの果実のために

その一つは
時鳥に啄まれて逝った
またも ....
のらさんきち(15)
タイトル カテゴリ Point 日付
Misery Christmas自由詩017/12/25 4:39
勝鬨橋自由詩217/12/12 19:46
0.1ミリメートル未満の心自由詩117/12/8 18:45
伝書鳩自由詩017/12/6 7:34
齟齬自由詩117/12/5 19:04
明日も働く者のための麦酒自由詩217/12/4 23:41
1/365歳、年をとる自由詩117/12/4 7:47
惑星外生命体自由詩017/12/3 12:21
命の忘却自由詩017/11/29 7:29
死を語るなら自由詩217/11/25 12:13
朝食林檎ヨーグルト自由詩617/11/24 20:45
失われた雨空自由詩217/11/23 15:17
孤独と呼ぶには幸せ過ぎる、或る日のこと自由詩217/11/21 15:15
詩は言葉に、それとも心に宿るものか自由詩317/11/19 22:52
種を蒔く人自由詩217/11/18 17:36

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