長いおしゃべりが終わった後の
ため息みたいなことばののこりかすを
重ねては貼り付けて
歌をつづる

私は夜警
そぞろ歩き
見守り
行為しない
私は抑止力

私の歌は警鐘ではない
 ....
オープンキッチンの頭上に掲げられた
黒板に描かれた今日のメニューを端から読み上げ
アテナイの学堂の壁画を見上げて
床に降ろされたシャンデリアの
埃にまみれたキャンドル型の
電球が七色に輝いた ....
朝が昼になる瞬間に
日向と日陰の境目で生まれた私は
市街地と砂漠のきわで育った
砂漠ではたくさんの流れ星を見ることができる

気をつけて
と言われて
気をつける子どもはいない
夜に裸足 ....
ジャニス、ジャニス、と
私を呼ぶ声がする
呼んでいるのは年老いた私
誰にも抱擁されず
誰にでも抱擁されたかった
年老いた私

二階の足音が聞こえる
一度あったことは忘れないものさ
た ....
大丈夫?
大丈夫
心配?
心配ない
私が私に尋ね
私が私に答える
それは内なる神との対話

私たちが見ているものは
私たちが見ていると信じるものは
本当に私たちの目が見ているのか
 ....
Museum of Broken Relationships
星のきまっている者はふりむかぬ

私がニューヨークへ
映画のプロモーションに行くと
朝5時半から行列ができた
8時の開場までに ....
私は多くの川を渡った
川の名前は忘れてしまった
私は多くの悲しみを歌った
そして悲しみについて多くを知らない
知るとは外から眺めること
そのなかにいる者は眺めることができない

私のよく ....
光と影の中で
息を詰めている
都市と星

船は極地の上空にあり、
眼下の地球は
完璧な半球となって見えていた
昼と夜を分かつ明暗境界線を
見下ろしていた

境界線のうち、真ん中から ....
 
 言うまでもなく、言葉は万能ではない。僕たちの言葉による意思伝達は、ほとんど奇跡と呼んでも差し支えないほどの、言葉の周囲をめぐる曖昧な了解のうえに成り立っている。もしかしたら、そんな気がしている ....
 
九月

僕らは歩いた ときには
手をつないで ときには
手をはなして 僕らは歩いた
夜の道を 急ぎ足で

そして見たものを 見た
順番に声にしながら 夜の
運河に浮かぶ水母 海 ....
夜はまだ浅い
通りは静寂だ
ドアが開きドアが閉じる
そのあいだだけ
店内の喧騒が通りに溢れる
闇が深まる
夜はまだ浅い

期待が大きい分、失望も大きくなる
まだ柔らかいアスファルトに ....
花柄のキャミソールの下の 
薄い胸の底で
彼女は
どんな痛みも光に変える
その声はまるで
強い雨の中を上昇していく一羽の水鳥
国際空港に次々着陸する旅客機が
サーチライトの光を放ち
暴 ....
夜の公園、移動手段 
水から上がったばかりの濡れた髪が
いつもより黒く輝いて
僕はその光りを好ましく思った

かつてその人が指輪を投げた
対岸までの長い距離
指輪が不要になるとは
何か ....
*
リンパのようにはりめぐらされた
首都の地下の冷えたレール
そのところどころが表皮をかすめ
夜になると光る花を咲かせる

昇ってしまえばあとは降りるだけ
観覧車は僕らをどこにも
 ....
 深夜2時、数枚の年賀状を投函するために郵便ポストまで歩いていった。約300メートルのアスファルトの舗道。見上げると真黒に晴れた夜空に冬の星座が輝いている。今年もあとわずかで終わる。年が明ければす .... 線描画のような街
おびただしい数の
妖精めいた小さなものが
家々の窓から
わらわらと現れては
空に溶けていく
遠くから煙の匂いが流れてくる
人が消えるのは
こんな夕暮れだ

背が伸 ....
 雪が解けて木々がいっせいに芽吹く。地表の下は地下だ。すべてが地下だ。
湿った落葉が陽に照らされて、ゆっくりと乾燥していく。その下は陽の届かない
地下だ。 

 耳をすますと、小さな音が聞こえ ....
セダム 沙漠に咲く小さな花
極度の乾燥にも耐えうる種は
都市の上空に

正確で厳密な彼女の仕事は
成層圏を行きかう祈りと重なり
いつか惑星へと届くだろう

無重力のラボラトリーで
小 ....
すべてを知りたいと
思うところから
なにかが終わりながら
なにかが始まる

夕陽が沈む
半袖にも
長袖にも
橙色を映して
前を歩く人の
トートバッグも
紙袋も
橙色に染めて
 ....
1.
流星群のニュースを眺めながら、キッチンテーブルにほおづえをついている人。
窓の外は曇り空。明日は雪の予報。その涙がはやく乾きますように。

映画館のロビーで、美しい少女が
父親といっし ....
1.
ふたりが出会うしばらく前から
世界は始まっていた

ナイトフライト
夜の音楽

夜明けのおそい
鉄色の街へ
翼に乗って君に会いに行く
雪解け水を湛えた深い森の
ビリジアン色 ....
大人は判ってくれない
どうでもいいような深刻な悩みと
爆走するハートを抱えたまま俺たちは
夜の待つ街へといつもいつも
それには理由がある
夏の朝まだ明ける前に飛び出していくフルーツたちを
 ....
*
朝のメトロの構内へとつづく階段で
イヤマフをはずした瞬間に
流れこんでくる新鮮なノイズ
「あ、地球の音」と彼女は思う

落し物をしてかがみこむ人を
よけながらホームへ降りる
マスク ....
歩きつづけていればいつも風のなかにいられるのに
立ち止まればいつも後悔ばかりあふれ出す
そんな思いを振りはらいながら地下鉄の駅まで
強い日差しに照らされて歩く

明け方に見た夢のなかで傷つけ ....
このごろは誰も彼もが
この不完全な世界に嫌気がさして
あるいはまだかいだことのない素敵な匂いや
見たことのない景色
ダーウィン・フィンチ
新しいリズム 韻律をさがして
親しい友にさえいつ ....
海岸線から見上げる丘の東屋には
大きなオレンジの実がなっていて
僕らはいつでもそこに行けるんだ

貝だらけのビーチに一人こしかけ
波にたわむれる君びしょぬれの犬
西の入り江に沈むオレン ....
夏草に息をつまらせながら
とぎれとぎれのたよりない光跡を追いかける
光跡は小さな流れに出会う
同じ場所で僕たちも出会った

滝のしぶきがかかる地下道を通り抜ける時
すれちがう幸せな記憶をた ....
*
国際宇宙ステーションが
きぼうを乗せて
日没の名残を反射しながら
海峡の上空を通過していく

その光を楕円のプールで
滑らかな背中をひねり
口元に笑みを浮かべて
スナメリが見上げ ....
朝まだき始発を待つ
プラットフォームに
小さな風が吹いている

ドアが開き
ドアが閉じる

車内に流れ込んだ風が
まだ新しいシートのうえで
とまる

ガラス玉がひとつ
地下鉄の ....
風は光にあこがれる
道が光る
海が光る
光が光る

風は光を持たない
風は色を持たない

わたしたちが見ているのは
風ではなく
風の通った跡
風の通り道
風の過去の姿

そ ....
カワグチタケシ(67)
タイトル カテゴリ Point 日付
夜警 ~Billie Eilishに自由詩124/1/2 0:43
アテナイの学堂 ~Whitney Houstonに自由詩323/12/16 23:20
眠るジプシー女 ~Linda Ronstadtに自由詩523/12/16 10:14
草上の昼食 ~Janis Joplinに自由詩223/12/2 16:55
キューピッドとプシュケ ~Aretha Franklinに自由詩023/11/29 23:53
春 ~Judy Garlandに自由詩423/11/26 23:49
糸杉と星の見える道 ~Billie Holidayに自由詩123/3/21 22:49
病院船自由詩320/5/3 11:18
MAR November 4 2003自由詩119/9/20 0:27
Universal Boardwalk自由詩219/4/14 0:44
fall into winter自由詩317/11/11 0:38
花柄自由詩217/9/21 23:25
水玉自由詩117/9/21 23:25
観覧車自由詩617/2/2 23:22
希望について散文(批評 ...217/2/2 23:19
線描画のような街自由詩315/10/24 23:05
森を出る自由詩215/5/23 10:53
無重力ラボラトリー自由詩315/4/15 23:51
すべて自由詩3*14/12/20 12:11
チョコレートにとって基本的なこと自由詩214/12/20 1:10
バースデーソング自由詩214/6/21 1:59
ANGELIC CONVERSATIONS自由詩314/3/14 0:09
月の子供自由詩313/12/21 0:06
新しい感情自由詩613/11/30 2:04
スノードーム自由詩2*13/11/3 0:29
DOLPHINS自由詩313/8/21 0:15
自由詩613/6/29 0:06
自由詩413/4/20 21:25
風のたどりつく先自由詩113/2/25 22:54
風の通り道自由詩313/2/3 1:20

Home 次へ
1 2 3 
0.05sec.