それは、柔らかな貨幣だった

ともすれば解け崩れそうな輪郭を
丁寧な所作で一口大に切り分けては
どうとも表現のし難い、営みの味を転がして
手垢にまみれたそれを飲み下した

{引用=あなた ....
食べきれないものを並べた
わたしたちの食卓は低く、真四角のこたつだった
静かな入江のような天板は
口にするもので溢れかえった

這いまわる視線にフォークが突き立てられると
水がこぼれた
 ....
鼓動と同じペースで手を叩いたら
どちらか分からなくなった

手を止めた瞬間に崩れ落ちる身体を想像しては
足元を悠々と闊歩する
蟻の行進を眺めた

つま先から少しずつ、食いちぎられるまま
 ....
遠くまで来た、という自覚だけを持って
切符をくぐらせる

{引用=そちらは行き止まりですよ

知っていますよ

そうですか、ではお元気で}

まっさらなロータリーの照り返しが
あぶ ....
わたしのデスクから斜め四十五度の視界に
ペールブルーの空がのぞく

けだるさを隠しもしない
ぬるま湯のようなオフィスで貪るのは
春の新作とか、要領を得ない愚痴とか
とにかくもふんわりとした ....
光を見た
瞼は下ろしたままだったから、それはぼんやりとしていた
遠くの方で地面へとたどり着いたあと
弾けて消えて
あとには朝が残ったようだった


有り金をはたいて
青い鳥を買 ....
皮脂で汚れ切った車窓越しに
遠ざかる
街の灯を眺めている

真っ当に生きて
正しく幸せになることが
こんなにも簡単だと気付くまでに
随分と
遠回りをしてしまった


 ....
明日はきっと晴れるだろう
君がいても、いなくても

君の好きなあの子は仕事に行くし
君の嫌いなあいつはよろしくやってる


明日はきっと晴れるだろう
君がいても、いなくても ....
呼吸をすること
雲の形をなぞること
耳をふさぐこと
花を摘むこと
水を飲むこと

きらきら光るアスファルト
濡れた唇
螺旋状の階段
柵越しの落陽

吊るされた制服
皺だ ....
1.薄暮

食卓には
真っ白なお皿と、銀のフォーク
窓から扉へ吹き抜ける風と
その匂い

飴色の空
地平線
瞬きながら暮れる、滲んだ宝石

泳ぐ魚の群れを追いかけて
追 ....
色とりどりに囲まれて
瞼を閉じている

ここは砂の城で
うみねこが足跡をついばむから
来た道も忘れてしまった

言葉は
その時だけのもので
振り返っても、目を凝らしても
形にはなら ....
(11)
タイトル カテゴリ Point 日付
文書グループ
十行詩文書グループ23/7/31
投稿作品
前借[group]自由詩3*23/7/31 17:42
団欒[group]自由詩023/6/1 16:15
解散[group]自由詩223/5/31 17:28
巡礼[group]自由詩1*23/5/19 17:32
幸福につかれたら自由詩3*23/5/18 17:43
憧憬自由詩320/1/11 16:24
終電自由詩9*17/6/8 16:57
眠るとき自由詩1*17/3/3 18:41
ぼくらのさよなら自由詩317/2/16 2:45
空についての三編自由詩217/2/1 1:04
別離自由詩7*17/1/20 12:45

Home
0.04sec.