さざめく光の城天文博士が咳なさる 姫さまはお笑ひだ王さまは微行され 太子さま月姫に懸想文 ....
訪なへるものとてなくも幽闇に微光充ちたり蒼き花苑 あひ見んとかね言交はすあて人の姿うたひぬ ....
譯しそむアイヒェンドルフ日の盛り 夜涼しイェイツほぬかささやけり ....
電車通りの雨あがり
スイートピイの茶亭いで
若きびおろん弾きひとり
舗道にスウベニイルなり
少年少女手をとりて
頬紅らめてをづをづと
きき入るスウベニイルかな
びおろん弾きの夢心 ....
夏の星戦火はよもや遠からず 無名C級《戦犯》辞世 ....
雨夜...、なすともなく...蓄音機。 ふたり...。リュクサンブール。マロニエ、緑葉、飛行船。 娘たち、タルト、即興楽師...、 ....
主さん来なんし 夢の手枕 三千世界 ....
少女とはかなしきものよ青嵐
手袋の忘られてあり
五月の駅に終列車過ぎ
暮れ果てて草の匂へる
誰かあるいらへのなくも
手袋をとりて見つむる
をみな……忘れ……
古りし駅もだせり
夜鳥ささやく新月や
....
あひ見てののちの心のうらぶれや
白妙の衣袖しぼりつつ
しんしんと闇のかたれり春深し
燭涙ほぬか佳人ささめくあたら夜
花冷えを老母こと問ふ幾たびぞ
連絡船はさいはてに
列車を積みて揺らぎたり
吹雪く海峡暮れゆきつ
霧笛のおもく迫りくる
行手に君のありぬとぞ
文にちかひて来たりけり
東都さかりてはるけくも
夜行列車の幾時間
....
花冷えを宵に裸体画うす光る
人よいざ心は知らね古下駄は
鼻緒の切れて借りもやらざる
本歌
人はいさ心も知らずふるさとは
花ぞむかしの香に匂ひける
貫之
残雪の道凍りつつ
晩冬のいともきびしく
行人だちはひたにもだせり
ふと町猫のゆき過ぎぬ
街道に樹木つらなり
冬芽ゆたけく小草睡れり
むら鳥の地啼ほぬかに
翠なす春とほからじ
....
もとほりて街の片すみ
小草生ふ緑萌えつつ
冬すぎて歓びうたふ
木の下の命なるなり
われ座して見詰め入りなば
刻ごとに色変へなせり
名も知らずただ見入りたり
小草いま春の光に
....
雲の影落花まつはる緑池かな
ふと、祈るともなくねがふのです。
わたくしの稚い恋が、空のどこかに、
まだ光るのなら、
星の蒼さに永遠にのこりますやう。
わたくしの実らぬ想ひが、天の記録に載り、
....
駒止めて待つた待つたのかひもなし
長屋わたりの将棋一番
本歌
駒とめて袖うち払ふ陰もなし
佐野のわたりの雪の夕暮れ
定家
ほどほどに愛し愛され金婚式
ラマダンの月影天幕に秘戀
ララバイの君の横顔見つめつつ
タバコ揉み消し港暮れゆく
夕かけて訪はばとはまし吹上に
鐘とよむてふいにしへの街
高座ハネ夜道に沈丁花ほぬか
小糠雨寒の戻りを泰西画
あなわが君はいと雅び
篠笛に唐の秘曲を美はしく
衣も艶やか位もあてに
おとどの御子とおはすなり
さる年のさる冬なりき
雪の中道失ひて伏し給ひ
わが山がつの小屋にして
心ばかりの手 ....
思い出ははるかな昔
若い日の夏のひと時
あなたの瞳さやかな髪
緑の山はわたしたちを
つつみわたしは歌った
あなたは銀笛を吹く
その後ろ姿のさやけさ
声ひとつなく別れ
記憶はついに絶えず ....
チチアンのヴェヌスもの倦く横たはり
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