[11]田代深子[2010 08/24 23:11]★5
夏目漱石『こゝろ』読書感想文
都内某高校の国語教員である友人Nは常々、『こゝろ』を高校の現代文教科書に掲載することに疑問を感じている。友人Nによると、教科書の抜粋を読んで「Kは先生よりも美形で頭脳も人間性も優れており、お嬢さんが本当に好きなのはKだ」と見なす生徒が相当多いらしい。Kは完璧で悲劇的な被害者、先生はKに嫉妬する卑劣な加害者と色分けされ、構造の単純化が行われる。友人Nはまじめな教員なので、見所のある生徒に対しては小説全体の読み直しを命じ、聞きなおす。「Kは、なんで死んだと思う?」なんと恐ろしい。彼女が教え子に読みとらせようとするのは、人間は、ほかの誰のせいでなく、それぞれの心ひとつで
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