[105]一番絞り[2004 08/12 10:19]
力と、オッパイのために離れていこうとするコトバの浮力がある均衡をもって
引き合い、押し合い、立ち止まり、逡巡しつ書き手から離れていこうとしている。
そのようにして離れていこうとする詩のコトバへの愛着と戸惑いと未練が爽やかに綴られている。

   もちろん、意思の向かう先にではなく
   わたしをはなれ、たぶん
   雲のように、見上げる場所へ
   見上げられない場所へ
   あるいは見上げない場所へ

この詩の表題が、改稿前は『雲の城』であったことを考えれば、
近寄れば手に掴むことも見ることもできない水蒸気のかたちつくる城のような、
そのような遠い遥かな場所へコトバは離れていこうとしているのだ。

ま、ここまでは何の問題もない。ただ、目を閉じてさわやかに味わえばよいのだ。
どこにもないことばの魔術に酔えばいいのだ。
とにかくこの一、二連、これまで読んだどんな詩のなかでも
一番好きなフレーズですねんのねん。
(つづく)
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