[568]吉田ぐんじょう[2009 09/04 14:19]☆
く色の浴衣で、わたしの入院着にだけ帯がない。だから前を合わせることができず、陰毛から乳房から傷から何もかも丸出しだ。風が通ってすうすうする。
夫はうつむいて、怒ったような顔をして、いつまでも黙っている。
・わたしはどこかのパン屋にいる。奥の方から店主らしき人が何か言っているのが聞こえる。
「なんでパンなんか焼かなきゃいけないんだろう。何の意味があるのか。先着順の特別なパンだって店員が全部食っちまうし、客に申し訳ない。おれはパン屋をやめたい」というようなことを延々としゃべくっている。声ばかり聞こえて、姿はちっともみえない。
やきそばパンをひとつトレイにのせて、レジに行き、すいませーん、と声をかけても、店主らしき人の声が聞こえるばかりで店主はおろか店員すらこない。そのうちわたしは、この声は録音テープを流しているだけだということに突然気づいた。店主らしき人はとっくに店をやめてどこかへ行ってしまったらしい。
パンばかりが静かに並んでいる。
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