降り来る言葉 LXV/木立 悟
 





歌声が
錆びた螺子を廻す
浪は 自身を消し去るものを
待ち侘びている


門のむこうの門のむこうを
陽は照らし陽は照らし陽は照らす
曇とともに 地に落ちながら
灰の筆をはしらせる


もう鉛と塩を
分けなくともよい
だからこそ右手の指を
心臓に刺している


楔を打つ
海を剥がす
牙に触れる
声に変える


怒号と叙情が
目の底を洗う
成長しない原 棄てられた塔
速い曇 速い光


燃えている 笑っている
血のにおいのする渦の中心
白の前に立つ白の群れ
夜を阻もうとして夜に染まる


煙の夜を昇る裸火
羽は森の上をゆく
羽の上の森 森の上の羽
ひとつの指に貫かれゆく


金と緑が
水を埋める
流れに沈み 再びつもり
星を廻す浪になってゆく



























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