降り来る言葉  LIII/木立 悟
 




水か影かわからぬものが
器の底を囲んでいる
円の一部を
喰んでいる


またいつか会おう
会うより速い別れを
くりかえし
くりかえし


見えると見えないのはざまの距離は
常ならず
常に 常に
ただ羽として流れている


水は光に 光は水に
不可分のままそのままに
山の頂でも山すそでも在る
まぶたの上の 虫でさえ在る


老いて熱く
若く寒い
ひらかれた窓
ひかり あびて ささる


重ねるたびに
時を越える音があり
色があり かたちがある
歩みは歪みを 歩みつづける


常なるもの無く常は在り
夜ごとの水に
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