梅のおにぎり/千波 一也
 
いで
話し相手なんか
当然いないし
長いあいだ
閉じていた
わたしの口にはね
大きかったんだ
おにぎりは
でも、
硬くなってた口をこじ開けて
ひとくち
ほおばったらね
とっても
美味しかった

「ありがとう」って
かすれた声で
つぶやいた

つぶやいて
うつむいた



仕事を辞めたかったのは
ひとに疲れていたからで
辞めてしまえば
変われると思った
変わってしまえば
うまく
逃げられると思ってた
(いま思えば
(都合の良すぎる考え方だね
(あんなにも弱かったんだね
そんなわたしが
面接に
うまく応じられるわけもなく
ひどく
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