地獄に一番近い島/千波 一也
風の手触りなど
いくらでも描けてしまうように
わたしとあなたの
輪郭は
ありふれた景色なのかも
知れないけれど
戯れることの
ひとつ
ひとつに
やわらかく透ける名前があって
眠りつくひとときの
温度にこそ
たやすくほどける数字があって
この島国は天国に一番近い
甘いことも
苦いことも
曖昧な区別の両手に掬いあげて
すべての過去は幸福に
したたる
そうしていまが
明日へと続く
掴めそうで掴めない尾のような
ひとすじが
流れる
わたしたちは
未来を知らされていない代わりに
夢見るすべに長けている
うるおう言葉を
互いの肩にのせ合い
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