彼女の聖書/なかがわひろか
 
暮れて
どうしてそれが書かれていないのかと
不思議に思いました

そして
少し
嬉しく思いました

自分は全てを知っているけれど

たった一つ知らないことが
あることに

聖書は
とても
嬉しかったのです

そのときの聖書の喜びようと言ったら
それはそれは

とても

愛しいものなのでした

聖書は

じっと

明日が来るのを
毎日毎日待っていて

それを記すように

なったのでした

(「彼女の聖書」)
   グループ"アナザー・ストーリー"
   Point(7)