ヤコブの梯子/佐々宝砂
 
東の空 雲間から矢のように落ちる光 
あれはヤコブの梯子というのだと 
少年に教えたクリスマスの朝 
うすらいは俺の足に踏みにじられ 
音も立てずに割れた 
少年の茶色っぽいクセっ毛を 
少年が育てた仮想のモンスターの名を 
俺は覚えている 
もちろん俺は少年の名を知っている 
けれど俺はその名をここに記さない 
俺たちは寒バヤを釣りにゆくはずだった 
あんなつまらないザコだけど 
南蛮漬けにすりゃ旨いんだと言うと 
クリスマスに南蛮漬け?と 
彼女は笑った 
しかし彼女はもう笑わない 
俺の名を呼ぶこともしない 
けれど日常はまだ続いている 
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