エリオット「伝統と個人の才能」/藤原 実
その手際はなにか手品のようで、タネが隠されているという感じを与える。また、捨てられた札(ペイターのように)の側に立てば文句のひとつも言いたくなるような理不尽さもふくまれている。
エリオットは「詩とは力強い情感がおのずから溢れ出たもの」(ワーズワス)というロマン派的な情緒を否定した。詩とはそんな詩人の個人史に閉じこめられたものではあってはならない。
「詩人がなんらかの意味で人の注意をひき、あるいは興味をおこさせるのは、その個人的な情緒、つまりその生活における特定の出来事によって喚起される情緒によってではない。
この詩人の抱く特定の情緒は、単純、粗
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