水没ハーモニー/千波 一也
 


つきの誘いにうみは揺れ
えいえんのわかれが
ちぎられてゆく

みずのかがみに映るのは
浮かびのひかりか
しずみのそこか
こたえをつかめぬまま
円い波だけが
のこされて
こころならずも
こぼれ落ちる笑みに
なつかしさの
染まる
むね


つきへと昇るものたちを
しずめる都を
よみと云う

終わりゆくはじまりも
その
さかさまも
互いの果てを
およげぬかぎりは
しみる涙にほかならない

やがて
乾いてゆけるかなしみに
うるおいは
幾度もゆるされて
なにものも涸れはしない

おぼれることのたやすさに
或いは
閉ざされるがゆえに
こえは
あふれかえり


繊細にうしなわれてゆく
繊細なものたちのため
みずのかがみは
なお
すみわたる

うみと
よみとが
奏でるはざまに



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