越権/千波 一也
火が
ほしかったから、
そっと
恥じらいをまぜて
お月さまに
耳打ちしました
そっと
まるで
玩具のような運命の
わたしです
あわい
夜の吐息にさえ
消されてしまいそうな
さびしい
さびしい
祈りです
それだから
火がほしかったのです
あの
尊い遠くの
お月さまなら、
授けるすべを
ご存知かもしれなくて
蟻ほどにも働けぬ
不精で
矮小な
たわごとだけれど
ささやかならば
ささやかなりに
許されそうで
望みを
こぼしてみた次第です
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