小詩集【にゃお。】/千波 一也
 
在に



   まぼろしのような爪に
   頼るともなく
   暮らしは
 
   傾いていたのだろう
   五感をただしく
   なげうって



  ふるさとがまだ煙のうちは
  凍える季節もわるくない

  できるだけ
  たくさんの意味に
  連れられて帰りたい

  薄皮みたいな
  よろこびでいい
  だから、円く
  円く描かれ
  揺れて
  みる


   軒先で待っているのは
   おわらない雨

   ふしぎに濡れる
   傘のなか





八 ぬくもり



  ほんの小さなぬくもりに
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