小詩集【水没ハーモニー】/千波 一也
 
 始まってゆくならば
  還る先を見まごうことの無きように


  もっともうつくしい廃墟のなかで
  みなもとの名を水だけが忘れない





四、くらげみさき


   まんげつのよに おいでなさい

   ひしめく よるの
   ひしめく よるべは
   ぼんぼりのよに たゆたうくらげ

   まんげつのよに おいでなさい



   かいがらねむる よを つぶる
   なみは つまれて
   こえ つむる

   こころ ゆくまで おさがしなさい

   からまるくらげは ときの から
   どく も 
   どかぬ も
 
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