思い出は、朧げに。/海月
 
微笑みは遠くに。

麦わら帽子は陽射しを遮り
君の表情も影で隠す

君の小さな口元
囁く声は蝉に掻き消された

神社の境内までの一本道
轍がこの頃良く目立つ様になり
車が日に何台も通り
祭りでもないのに騒がしい

君の白い肌
深い病とは聞かされていた
その為に仲間達は誰も関わりを持とうとせず
君は木陰で見つめていた

校庭で伸びる影を見送り
飛行機雲を目で追い
端の方は青空に消えた

人の存在も飛行機雲に似て
一瞬の儚さと切なさ
時が巡れば忘れている

電話口で僕が泣いた。

いつかの死へ
弔いの詩を此処に。

初恋
こんなに蝉が鳴くから
思い出した。

今宵
月は朧げに揺れていた。

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