思い出は、朧げに。/海月
 
微笑みは遠くに。 
麦わら帽子は陽射しを遮り 
君の表情も影で隠す 
君の小さな口元 
囁く声は蝉に掻き消された 
神社の境内までの一本道 
轍がこの頃良く目立つ様になり 
車が日に何台も通り 
祭りでもないのに騒がしい 
君の白い肌 
深い病とは聞かされていた 
その為に仲間達は誰も関わりを持とうとせず 
君は木陰で見つめていた 
校庭で伸びる影を見送り 
飛行機雲を目で追い 
端の方は青空に消えた 
人の存在も飛行機雲に似て 
一瞬の儚さと切なさ 
時が巡れば忘れている 
電話口で僕が泣いた。 
いつかの死へ 
弔いの詩を此処に。 
初恋 
こんなに蝉が鳴くから
思い出した。
今宵 
月は朧げに揺れていた。 
 前 次 グループ" 、 。"
 編 削 Point(2)