薄 雷/塔野夏子
 
春の遠くに薄雷が鳴って
さみしい とか
かなしい とか
形容しても詮なく
雨は降り
菫の花を濡らし

己が
いともたやすく傷つく
ということに
また傷つきながら春の長雨

形容しても詮なく
けれど形容しようとしてしまう
己の何処かをこわしながら

遠くに薄雷が鳴って
かすかに 傷と共鳴し

ゆるやかに諦めながら春の長雨


   グループ"春のオブジェ"
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