浅い春/塔野夏子
 
浅い春が
私の中に居る
いつからかずっと居る

浅い春は
爛漫の春になることなく
淡い衣のままで
ひんやりとした肌のままで
佇んでいる

(そのはじまりを
 浅い と形容されるのは
 春の特権でありましょう)

鴇(とき)色の雨を
あるいは真珠色の日射しを
ながめながら

うっすらと微笑みながら
けれどどこか
うつろな眼差しのままで

かたわらにいつも
菫の花を咲かせて



   グループ"春のオブジェ"
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