奴隷/大覚アキラ
夏という季節は
ひとつの国のようなものだ
無慈悲な王が支配する灼熱の国だ
蝉の声が轟きはじめると
おまえたちはまるで
夏という国に力ずくで連れて来られた
哀れな奴隷のようになる
うなだれて
顎の先から汗を滴らせ
茹だるような熱気の中を歩け
老いぼれの野良犬のように
亡者のように
来る日も来る日も
叩きつける太陽から逃れるようにして
日陰と日陰の間を
息を止めて這いまわれ
やがて
夕暮れに涼しい風が吹くようになると
おまえたちは
夏という国から
帰ってきたような錯覚に陥るだろう
そして
あんなに苦しかった日々を
おまえたちは懐かしんだりもする
黒く焼かれた肌を眺めて
夏という国の思い出に浸ったりもする
結局
おまえたちは誰もが夏の奴隷なのだ
あの灼熱の太陽に焼かれて
真っ白な灰になってしまいたいと
心の奥底では願っている
愚かな奴隷なのだ
奴隷どもよ
夏はこれからだ
塩辛い血の汗を流しながら
歓喜の悲鳴を上げろ
王にその叫びが届くまで
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