三月/大覚アキラ
マフラー巻いて早足で歩くと汗ばむのに
カーディガンだけで信号待ちしてると肌寒い
そんな
三月の風に腰のあたりを撫でられながら
住宅街の隅の小さな公園のベンチで
悲しいふりして煙草をふかそう
東の空から
ロールシャッハテストの染みみたいな感じで
夜がじわじわと広がっていくよ
ほら
とてつもなく大きな黒アゲハが羽根を広げて
世界を包み込もうとしている
マフラーは明日燃やしてしまおう
カーディガンもゴミ箱行きだ
自分が死んだり
誰かを殺したりする
その代わりに
有り金ぜんぶ煙草に換えて吸い続けるんだ
この住宅街の隅の小さな公園のベンチで
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