九月なのに/大覚アキラ
 
九月なのに炎天下で
九月なのに濃紺のスーツは汗まみれで
九月なのに就職活動中の女子大生たちによる真昼の行軍が
九月とは無関係に地下鉄の出口から延々と続いている

彼女たちはそれが決まりごとであるかのように
みなメンソールの細いタバコを口に咥え
書割みたいな白々しい風景の中を
つまらない顔で早足で歩いていく

ピストルが欲しいわ
覚醒剤でもいい
そうでなければ奴隷になってくれる男
もしくは私を奴隷にしてくれる男

終わらない夏休みが欲しかった小学生の夏
終わらないものなんてないと知った中学生の夏
お願いだから終わらないでと祈った高校生の夏
お願いだかから何もかも終わってと呪った今年の夏

九月なのに炎天下で
九月なのに濃紺のスーツは汗まみれで
九月なのに夏で
九月なのに
   グループ"SEASONS"
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