死神と私 −夜の腕−/蒸発王
 

腕の長さが余るから
何人でも抱きしめようとする


言葉を聞きながら
夜の腕を見ていると
二本の腕はホームレスの一山を柔らかく抱きしめ
次の瞬間彼らは逝ってしまいました


“寂しいからだね”


死神は夜のことを言ったのでしょうけど
死神の声音のほうがずっと寂しそうでした
少し可愛そうになって
腕にしがみつくと
死神はけろりとした顔で
先刻死んだホームレスの人魂で御手玉をしています


そして
自慢げに言うのです


“夜に抱きしめられてはいけませんよ”
















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