照夜 ?/木立 悟
 



鏡のなかにうつる空の
少しだけ昏い蒼のほうへ
けだもの 実り 尾を引くむらさき
流れるように傾いていく
音のない列車のなかで
外から来る音を聴いている
光が近づく
光が近づく
遠去かることなく消えていく


あらゆるものに忘れられた石を抱いて
風のなかに立ち 空を見る
水たまりに落ちる星
闇のかたちをふちどる星
腕のなかのかがやきが
咲きひらく夜の匂いになってゆく


とどかない歩みも
ふりかえらない瞳も
痛々しいほどすみずみまで
激しく翼へと変わっていく
光の飛沫
姿の飛沫
川面から川面へと生まれゆく
水の裂けめさえ流れ去る日
言葉はただこぼれおちる


つぼみ ひらき たまえ
つぼみ ひらき たまえ


みな なにがしかの鬼を負っているから
みな 自身を折りたたむ魔を知っているから
次々と降りくる目を閉じた笑みが
震えるものを持つ証となり
みなにとって良き水紋となるように
果てのない道に重なる
花の標となるように








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