山岳地帯(マリーノ超特急)/角田寿星
 

ここでは稜線をつよくなぞるようにして吹きつける風が、けし
て浅くはない爪跡を至るところに残している。砂混じりのかわ
いた大気に、あれた山肌に、つつましい色を放つ丈の低い植生
群に、かるくひび割れたぼくの頬に。その風は海から届いてき
たのだと悟るのに、それほど時間はかからない。
空気は乾燥しているが照り返しは激しく、汗で濡れたシャツが
背にうっすらと張りついている。ぼくの、岩々のみじかい影、
束の間のコントラストを、一匹の蜥蜴がいそがしく這いまわり、
時を置かずに真昼の陽光に溶けて消える。ぼくはそれと会話を
交わすこともなく、足早に通りすぎる。

尾根をつたう道の眼下にひろ
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