オーバ・ニーチェの戦士エイソス(一)/朧月夜
そのころ、戦士エイソスは偽名を使って、オーバ・ニーチェに潜入していた。
彼が名乗ったのは、ハンザガリア・ユー・アリガルトという名である。
秘密機関であるオーバ・ニーチェでは、その会合の際、
誰もが仮面をつけることになっている。
お互いの素性を知らず、本名も知らず、ただ目的だけがそこにあった。
戦士エイソスは、自らは下級の貴族の出自であり、
野心をもってオーバ・ニーチェに参加したのだと表明した。
それに対するオーバ・ニーチェの面々の反応は様々だった。
反クーラス派である祭祀ウルム・ルーランテの反応は、
エイソスにとって歓迎すべきものだった。そうして、
武人であるマルコース・ハンダガルもまた、彼の味方をした。
(まず取りなすべきは、反クーラス派か、それともクーラス派か?)
戦士エイソスは戸惑った。何はともあれ、何としても内戦は避けたい。今この時、この国が
内戦に突入すれば、レ・スペラス、ラゴスなどによってクールラントは併呑されてしまうだろう。
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