アイソニアの騎士の焦慮(一)/朧月夜
 
そのころ、アイソニアの騎士も、盗賊ヨランとともに、
イリアスの捜索を続けていた。
もう、イリアスが消息を絶ってから、二か月の時が過ぎようとしている。
アイソニアの騎士は焦慮した。それをなだめるヨラン。

「騎士様。イリアス様は生きていらっしゃいます。
 知らせがないのが良き知らせ、と言うではありませんか。
 まだ、諦めるのには早計です」そんなヨランのほうこそ、焦っていた。
「俺は焦ってなど、いない。イリアスは生きている。

 ただ、彼女の身に不幸が訪れていないかと、それを案ずるばかりなのだ」
「不幸とは、拷問のことですか?」ヨランも落ち着きを失って尋ねる。
「そうだ。イリアスは、クールラントとアースランテの関係を築く鍵。

 彼女にもしものことがあれば、俺は祭祀クーラスを許してはおかない!」
「まずはご辛抱くださいませ、騎士様。祭祀クーラスとて、
 幼な子をその手にかけるようなことはしないでしょう。万が一にしても……」
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