錯綜する思惑(一)/朧月夜
アースランテの王、ハッジズは、
今やファシブルの国の半分をその手におさめようとしていた。
第二次ランランテ戦争が起こってから、二カ月あまりのことである。
「どうした、マリアノス。お前の力はそれだけのことか?」
ハッジズは分かっていたのである。マリアノスという女王が、
今はファシブルという国家の傀儡でしかないことを。
ファシブルの首都ファシには、今や八万という軍勢が押し寄せようとしていた。
兵士たちは口々に叫ぶ、「マリアノスはどうした? マリアノスはどうした?」
そのような恫喝に対して、マリアノスは口をつぐんでいた。
「この国家のありよう、どう思う?」マリアノスは側近に対して尋ねる。
しかし、有益な答えなど得られないであろう、とも思っていた。
(エインスベルがいてくれたら、このわたしの身も幾分かは救われたのだろうか?)
が、そんなマリアノスの問いも無力なものであるかのようだった。
(このままアースランテに屈するわけにはいかない。だが、どうすれば?)
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