ライランテ戦争開戦(五)/朧月夜
しかし、ラゴスの国でも侵攻してくる軍隊を、
ただ座して見ていたわけではない。
各々の邑(=むら)には、様々な魔道具が配られた。
その中でも最も優れていたのが、ミスフィオという杖である。
この杖の正式名称は、ミスフィオ・バッテという。
この杖を向けられた敵には、炎の弾丸が射出される。
すなわち遠隔攻撃の魔導具である。
南部の小規模な街々を奪われたラゴスでは、
追い出された市民たちが自警団を作っていた。
これらの自警団に、アースランテも苦戦を余儀なくされた。
いわゆるゲリラ戦である。これは攻撃側にとっては痛い。
ラゴスの軍務大臣である、シュランク・エルベは静かに言った。
「これは、縦深防御です。敵を出来るだけ深く誘い込んで、叩くのです」
シュランクは小国ラゴスにおいては、ことに優れた学識を持っていたのだ。
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