アイソニアの騎士の怒り/朧月夜
「俺はこんなにも無力だったのか!」
怒声とともに、アイソニアの騎士は机を叩いた。
「くそっ、祭祀クーラスめ!」その憤怒は収まらない。
彼の怒りは、その召使たちにも向けられた。
「お前たちは、今すぐに出てゆけ! 俺を一人にしろ!」
そして居室には、アイソニアの騎士一人が残された。
その日の朝、クールラントからの密使が、彼の元を訪れたのである。
いわく、「エインスベルは次の満月の日に処刑される」と。
「エインスベル、俺はあの時、考えを変えて、
お前も共にアースランテへと亡命させるべきだった。
こんなことを後悔するようになるとは、運命とはなんと皮肉なのか!」
アイソニアの騎士は椅子に腰を着け、頭を抱えた。
「俺は、俺の優柔不断を憎む! 祭祀クーラスを憎む! そして、
絆の神バルスバルデを憎む!」……悲痛な声が、たった一人の室内に響いた。
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