ファシの戦い(十三)/朧月夜
魔法石とは、魔法素子が集まった結晶のことである。
魔法石は、常に魔法素子を蒸散させている。
しかし、過剰な魔法素子の蒸散を防ぐために、
通常は弱い結界をその周りに張り巡らせているのだ。
マリアノスは、その結界を解けという。
これは、まさに諸刃の刀の決断だった。
魔法素子が充溢すれば、魔導士たちの戦いは楽になる。
しかし、それは敵とて同じことだった。
唯一の利点があるとすれば、アースランテの魔導士たちよりも、
ファシブルの魔導士たちのほうが数段優れている、という点にある。
マリアノスは、まさに魔導の力によって劣勢を挽回しようとしたのである。
しかし、魔法石の解放の末にあるのは、魔力の暴走だ。
元老院の議員たちは、そのことを重々承知しているだろう。
(今は多数派工作が必要だ)マリアノスは思うのだった。
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