ヨランの挑戦(六)/朧月夜
「ここはまさに、幽冥界なのだな……?」と、アイソニアの騎士が言う。
「ええ、そうです。しかも、通常の幽冥界とは異なります。
わたしも、いくつもの幽冥界を旅して来ましたが……」とは、ヨラン。
「このような風景は、わたしも見たことがございません」
「何? お前は幽冥界に来たことがあるのか?」
「はい。幽冥界とは、この世界ヨースマルテの中の、
一つごとの世界に過ぎません。むしろ、わたしたちが暮らしている、
現世こそが例外的な存在なのです。お分かりですか?」ヨランは落ち着いた声で言った。
エイミノアは、(この愚者、臆病者のなかに、なぜこんな確信が潜んでいるのか?)
と訝った。(俺は、この盗賊風情にすべてを託したことを、後悔せずに済みそうだ。
それにしてもエインスベル様。あなたは今も無事なのですか……)
「前に進むのみだ!」立ち込めてくる疑念や不安を振り払うように、
アイソニアの騎士は大きく口を開いた。「旅とは、常に危険が伴うもの。
俺たちは、エインスベルと俺とは、命が関わるような危機をも切り抜けて来たのだ!」
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