アースランテとの駆け引き(五)/朧月夜
「この戦争を止める、とは申しておりません。
ただ、我が国は貴国との和睦を願っております」
「人質を取っておいて、よく言う。しかし、
イリアスは人質の用をなさぬぞ」と、ハッジズの声。
「あれは、廃嫡された王子の娘。この国では、
ほとんど用をなさぬ存在だ。そのような者を、
人質に取ってどうすると、汝は言うのか」
「恐れながら、イリアス様の婚約者はアイソニアの騎士です」
「アイソニアの騎士? グーリガンのことか?」
「さようでございます。今、貴国にはアイソニアの騎士が必要かと……」
「奴めは、ファシブルとの戦いにも参与しなかった」
「イリアス殿がこの手にあったからでございます。
どうでしょう。イリアス様を返す代わりに、我が国と同盟を結ぶというのは?」
「同盟? お前は本気で言っているのか?」
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