アースランテとの駆け引き(十一)/朧月夜
 
「それでこそ、アースランテの女だ。
 アースランテには、臆病者はいらない。男でも女でもだ」
「しかし、妙なことがあります。イリアス様は、
 自分が王位継承者だとは知らない模様でした」

「彼女の父は、彼女を生んですぐに廃嫡されたからな。
 アースランテの戦士が、庶人の女と結ばれることなど、あってはならないのだ」
「それで、彼女は自らの名をイリアス・ナディと……」
「そうだ。殺すが良い。今、この国には第九位王位継承者と、

 第十位王位継承がそろっている。ヨアス・レ・ジリーナ、カリガル・ア・ナッハジーバ。
 そして、我が息子、クレールが全軍の指揮を執っている。
 ……貴国が我が国を訪れたのは、遅すぎたのだよ」

フランキスは、自国へ帰って祭祀クーラスに罰せられることを恐れた。
(この度の交渉は、何としても成功させる必要があった。
 ならば、失敗の次に俺は何をすれば良いというのか?)
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